胸神経

胸神経は12対あり、一般の脊髄神経と同じように前後の2枝に分かれます。後枝は胸椎の横突起を通過し、体幹の後壁に出てから、外側皮枝と内側皮枝に分けられます。前枝は肋間神経と呼ばれ、第1胸神経は主に腕神経叢の形成に関与し、第1肋間隙に小枝を供給します。第12肋間神経は第12肋骨の下縁をたどり、肋間動静脈の本幹に沿って最内肋間筋と内肋間筋の間を走ります。第1~第6肋間神経はそのまま胸骨の縁に達しますが、第7~第12肋間神経は下に行くほど斜めに、後上方から前下方へと進み、内腹斜筋と腹横筋の間を通って白線に達します。

日本人のからだ(児玉公道 2000)によると

浅肋間神経

脊髄神経前枝が最初に分岐する神経は、外肋間筋を支配するだけでなく、多くの肋上筋の支配神経でもあります。これは以前は単に外肋間筋枝と呼ばれていましたが、一つの筋枝に留まらないばかりか、体壁筋の形成を考える上で重要な意義を持つため、浅肋間神経と命名されました(児玉、1986)。

胸神経では特に明確なため、肋間神経(脊髄神経前枝)が最初に分岐する枝を浅肋間神経と呼びます。この神経は外肋間筋の筋枝であり、外肋間膜にも感覚性の枝を出します。Th7以下の肋間神経主枝は肋骨を越えて腹側に向かいますが、本神経は終始肋間に留まります。肋間神経の主枝は内肋間筋(第2層)の深層で最内肋間筋(第3層)との間を走行しますが、浅肋間神経は基本的に外肋間筋(第1層)と内肋間筋の間を走行します。この神経は外肋間筋の筋枝を出すほか、上および下後鋸筋、後肋上筋、深前鋸筋、前肋上筋、深外腹斜筋、外肋軟骨間筋に順次枝を出します。

以下は第1肋間、第2-第4肋間、第5-第9肋間、および第10-第11肋間の4グループに分けて説明します。

また、典型的な浅肋間神経と、肋上筋系が全て存在した場合の模式図(図89, 90)を示します。

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図89 肋上筋系の模式図(児玉, 1986)

浅肋間神経は黒で示され、一方、肋間神経本幹とその枝は白抜きで示されます。 Ici: 内肋間筋、Icm: 最内肋間筋、Obx:外腹斜筋、R:腹直筋、Rca: 前皮枝、Rcl: 外側皮枝、Rd:脊髄神経後枝、Rh:菱形筋、Sa:前鋸筋、Sbc: 肋下筋、Tr:腹横筋と胸横筋です。

図89 肋上筋系の模式図

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図90 各種の肋上筋についての模式図(児玉, 1986)

図90 各種の肋上筋についての模式図