橈骨神経の背側指神経

橈骨神経の背側指神経は、橈骨神経の浅枝の終枝であり、指の甲の皮膚と親指と指の爪床を支配しています。

日本人のからだ(千葉正司 2000)によると

手背の皮神経と背側指神経

前腕伸側遠位と手背の移行部には、外側前腕皮神経、橈骨神経の浅枝、後前腕皮神経、内側前腕皮神経、尺骨神経の手背枝が分布し、それらの末梢は互いに交通しています。手根の両縁でも、手背と手掌の皮神経が連絡しています(Hirasawa, 1931; 内藤,1934 a,b; Shiraishi, 1957)。

手背の橈側半の皮下には、橈骨神経の浅枝が分布し、外側前腕皮神経も橈骨神経浅枝と交通し、第1背側指神経に参加しています(山田・萬年,1985)。外側前腕皮神経と橈骨神経浅枝との交通は多様で、前者が後者に混入し、第9背側指神経に参加する場合もあります(Hirasawa,1931; Shiraishi, 1957)。手背の尺側半の皮膚には、尺骨神経の手背枝が分布します。背側指神経は通常、固有掌側指神経よりも細く、中節骨の指背に分布して終わります。

橈骨神経浅枝は、第1背側指神経と橈側の2本の総背側指神経に、尺骨神経手背枝は、第10背側指神経と尺側の2本の総背側指神経に分かれます。橈骨神経と尺骨神経は、手根あるいは手背で交通し、両神経の分布域は、手背の正中線上でほぼ二分される場合と、どちらか一方の分布が優勢な場合に区別できます。両神経の手背と指神経における分布勢力は、必ずしも一致していないことがあります(Hirasawa, 1931; Shiraishi, 1957)。

指背には、橈骨神経浅枝、外側前腕皮神経、尺骨神経手背枝が主に関与し、まれに後前腕皮神経、内側前腕皮神経、正中神経の掌枝も、上記の3神経に混入して分布しています(Shiraishi,1957; 安部ら,1980 b)。橈骨神経浅枝は第1-第5背側指神経を、尺骨神経手背枝は第6-第10背側指神経を分枝します。両神経は第2-第3中手骨間隙で交通(時には重複分布)しますので、第4-第7背側指神経には、橈骨神経と尺骨神経の両神経が参加することが多いです(Hirasawa, 1931; Hirasawa and Ukita, 1942; Shiraishi, 1957; 浦,1962, 1970; 寺田・藤田,1976; 熊木,1980; 平澤・岡本,1982; 金子,1982; 福山ら,1987; 千葉,1987; 河西,1993)。橈骨神経浅枝、尺骨神経手背枝がその分布を最大に広げても、最大で9本の指神経までであり、第1背側指神経に尺骨神経、第10背側指神経に橈骨神経は参加しないとされています。手背と指背の神経分布をHirasawa (1931)は7型に、Shiraishi (1957)は20型に分類しています。また、Shiraishi (1957)は、各指縁ごとの神経由来を詳述しています(表80)。

橈骨神経浅枝の欠如する例では、外側前腕皮神経がその分布域を代償することが多いです(杉山,1914; Hirasawa, 1931; 横尾,1933; 井上,1934; 内藤,1934 a,b; Hirasawa and Ukita, 1942; Shiraishi, 1957; 安部ら,1980 b; 児玉,1987; 中島ら,1991)。内藤(1934 a,b)によると、浅枝の欠如例で、外側前腕皮神経が第1背側指神経となり、尺骨神経手背枝が第2-第10背側指神経を分枝しているものが見られています。

080.png

図80 手背の皮枝と背側指神経の構成(Hirasawa, 1931改変)

図80 手背の皮枝と背側指神経の構成

( )は、87例中の出現頻度を示します。橈骨神経の浅枝(R)と尺骨神経の手背枝(U)との交通枝(Rc)については、RからUへの(III型)、UからRへの(II型)、そして双方に向かう(IV型)、各型が区別できます。Va型とVb型では、尺骨神経は第4背側指神経に参加しています。VI型の2亜型では、橈骨神経は第9背側指神経に参加します。この分類では、外側前腕皮神経の関与は考慮していません。VII型(1.1%、未掲載)は、橈骨神経浅枝の欠如例です。Vb型とVI型には、さらに亜型が区別されます。

D1-10: 第1から第10までの背側指神経、Rc: 尺骨神経との交通枝(橈骨神経)