内側上腕皮神経

内側上腕皮神経は、上腕の内側の皮膚に分布する知覚神経で、以下の特徴を持ちます:

また、この神経には以下のような変異や特徴があります:

これらの特徴は、上肢の神経支配の複雑さと変異性を示しており、臨床的にも重要な意味を持ちます。

J574.png

J0574 (右腋窩の動脈、正面図)

日本人のからだ(千葉正司 2000)によると

内側上腕皮神経は、腕神経叢の内側神経束や下神経幹の後面、下神経幹後枝から通常1本で起こり、腋窩静脈の深層を通過します。そして上腕内側から後面に回り、上腕後面から肘頭までの皮膚に分布します(Hirasawa, 1931; 川崎,1940 a; 河西・千葉,1980; Kasai et al., 1982)。この神経と肢鴛静脈との関係は、3型に分けられます(図71) (河西・千葉,1980)。しばしば肘頭を超えて前腕近位後面まで分布します(77%,内藤,1934 a,b)。起始が細い数枝に分かれる場合もあります。

内側上腕皮神経の分節構成は、C8とTh1の2根またはTh1のみとされています(川崎,1940 a;河西・千葉,1980)。特に、第1肋間神経の外側皮枝が出現すると、内側上腕皮神経の起始はすべてC8とTh1の両根となり、その起始がやや頭側に移動します(図72) (河西・千葉,1980)。

内側上腕皮神経は、腕神経叢の背側層に所属し、肋間上腕神経の後枝としばしば吻合します(図73) (84%,河西・山本,1966; 88%,相山,1972)。また、橈骨神経の後上腕皮神経とも吻合することがあります(8%,河西・山本,1966; 11%,河西ら,1989)。肋間上腕神経後枝と後上腕皮神経が発達すると、内側上腕皮神経が欠如することもあるとされています(佐藤進, 1971; 相山,1972)。内側上腕皮神経は、時には後神経束(あるいは橈骨神経)とも吻合します(5.6%,川崎,1940 a; 40%,相澤ら,1994)。そのさいには、内側上腕皮神経からの線維は主に橈骨神経の本幹に入り、後上腕皮神経には参加しないとされています(河西ら,1989; 相澤ら,1994)。