筋皮神経

筋皮神経は第5頚神経から第7頚神経に由来する外側神経束から発生し、烏口腕筋を通ります。この神経は烏口腕筋、上腕二頭筋、および上腕筋を支配し、外側前腕皮神経として前腕の外側半分に分布します。筋枝は上腕の前屈筋(烏口腕筋・上腕筋・上腕二頭筋)に、皮枝は前腕の外側部の皮膚に分布します。また、肘関節には関節枝が送られます。

日本人のからだ(千葉正司 2000)によると

筋皮神経は通常、腕神経叢の外側神経束から起始しますが、時折、正中神経との共同幹や腹側(あるいは稀に背腹)の神経の合体した神経幹からも始まります。筋皮神経は通常、烏口腕筋を貫通し、上腕二頭筋と上腕筋との間(上腕二頭筋の第三の頭が現れる場合には、その浅層あるいは深層)を通ります。その経過中に、上記3筋に筋枝を与え、本幹は外側前腕皮神経に続きます(淵野,1960 a; Serisawa et al., 1978; Kosugi et al., 1986 a,1992)。

上腕二頭筋に過剰頭が出現すると、正中神経との癒合を始め、筋皮神経の走行異常を併発することが多いとされています(藤田恒夫,1957; 浦,1962; Serisawa et al., 1978; Kosugi et al., 1986 b)。一方、東・曽根(1988)、小泉(1989)、児玉ら(1992)によれば、そのような関連性は薄いと述べています。外側前腕皮神経が上腕二頭筋を貫通する場合も報告されています(小杉ら,1984; 山田・萬年,1985; Kosugi et al., 1986 a,b)。

筋皮神経の分節構成は、通常C5-7が一般的です(Hirasawa, 1931; 荒川,1958 a; 小原,1958; 児玉ら,1992)が、時折、C8 (Th1)も参加します(川崎,1940 a)。

小泉(1989)によれば、烏口腕筋の支配神経は、筋皮神経から直接起こるほか、外側神経束あるいは中神経幹からも起始し、前2者からの烏口腕筋枝は常在し、それらには筋皮神経の本幹に対して、浅層と深層とを通る枝が区別できると述べています。また、筋皮神経の烏口腕筋貫通部位の変化についても、これら支配神経の消長と筋束の発達程度から考察しており、筋皮神経が烏口腕筋を貫かない例は、この神経より浅層にある筋束が著しく発達が悪い場合と考えています。

Horiguchi (1981)によれば、外側前腕皮神経は、上腕二頭筋の外側縁から反回枝(上腕皮枝、93.5%)をほぼ恒常的に分枝します。この反回枝は橈側皮静脈に沿って上行し、静脈に沿った狭い領域、すなわち内側は内側前腕皮神経、外側は腋窩神経の上外側上腕皮神経と橈骨神経の下外側上腕皮神経で囲まれた上腕外側の皮膚に分布します(内藤,1934 a,b)。外側前腕皮神経は、肘窩外側で筋膜を貫き、橈側皮静脈の尺側を下行し、前腕屈側の橈側半の皮下に分布します。その末梢は橈骨神経浅枝と交通し、手背での分布範囲に変化も見られます(Hirasawa, 1931; 内藤,1934 a,b)。