1. 基本構造と起始
腕神経叢の内側神経束は、神経叢の下部幹から発生する神経束であり、主に第八頸神経(C8)と第一胸神経(T1)の神経線維により構成される。具体的には、腕神経叢の下神経幹の前枝から形成され、腋窩動脈の内側に位置している。
2. 主要な分枝と支配領域
内側神経束からは以下の重要な神経が分岐する:
これらの神経は、上肢の屈筋群、手内筋の運動支配、および前腕内側部・手掌の感覚支配において、重要な役割を担っている。
3. 解剖学的位置関係
内側神経束は、腋窩動脈に対して内側に位置し、外側神経束とともに腋窩動脈を前方から挟むように走行する。この特徴的な配置は、正中神経ワナの形成において極めて重要な解剖学的意義を持つ。また、内側神経束は解剖学的変異が比較的少なく、その走行は一定している。
4. 臨床的意義
腋窩部での手術や神経ブロックなどの医療処置を安全に実施するためには、これらの解剖学的特徴を十分に理解することが不可欠である。特に、正中神経ワナの形成部位は、腋窩部での神経損傷を防ぐための重要な指標となっている。
5. 解剖学的破格と臨床的影響
内側神経束の解剖学的破格は比較的稀であるが、臨床的に重要な意味を持つ。特に、走行異常や分岐パターンの変異は、神経ブロックや手術時の合併症リスクを上昇させる可能性がある。そのため、術前の画像診断による確認が推奨される。
6. 発生学的意義
胎生期における内側神経束の発達と分化は、上肢の正常な神経支配パターンの確立に必須である。発生異常は上肢の神経支配異常や機能障害を引き起こす可能性があり、発生学的観点からの理解も重要である。
7. 最新の研究知見
高解像度画像診断技術の発展により、内側神経束の微細解剖学的構造や神経線維の走行パターンについて、新たな知見が蓄積されている。これらの研究成果は、より精密な手術手技の開発や神経ブロックの成功率向上に貢献している。