頚神経 Nervi cervicales [C1-C8]
基本構造
頚神経は、第1から第8までの頚神経の総称です (Gray & Carter, 2023)。その解剖学的特徴は、以下の通りです:
- 各頚神経は、前枝(腹枝)と後枝(背枝)に分岐します。
- 後枝の特徴:
- 第1頚神経後枝:後頭下神経として、深項部の上部筋群を支配します。
- 第2頚神経後枝:大後頭神経として特に発達し、後頭部の感覚を支配します。
- 第3頚神経後枝:第三後頭神経として、頭皮後部の感覚を担います。
- 前枝の分布:
- 第1〜4頚神経前枝:頚神経叢を形成し、頚部の感覚と運動を支配します (Wilson-Pauwels et al., 2024)。
- 第5〜8頚神経前枝:腕神経叢の主要構成要素として、上肢の神経支配を担います。
頚神経の機能的特徴
頚神経は、以下の3つの主要な機能を有しています (Drake et al., 2024):
- 感覚機能:
- 体性感覚:触覚、痛覚、温度覚、深部感覚の伝達
- 固有感覚:関節位置覚、運動覚の伝達
- 運動機能:
- 頚部筋群の支配
- 上肢筋群の支配
- 横隔膜の支配(主にC3-C5由来の横隔神経)
- 自律神経機能:交感神経系との連絡を介した血管運動、発汗、立毛などの調節
頚神経の解剖学的分布
- デルマトーム(皮膚分節):各頚神経は特定の皮膚領域の感覚を支配します (Standring, 2023)。
- ミオトーム(筋節):頚部深層筋群、肩甲帯筋群、上肢筋群の支配
- 主要な神経枝:
- 頚神経叢由来:小後頭神経、大耳介神経、横隔神経
- 腕神経叢由来:腋窩神経、筋皮神経、正中神経、尺骨神経、橈骨神経
臨床的重要性
頚神経の障害は、以下のような病態を引き起こす可能性があります (Moore et al., 2023):
- 頚椎症性神経根症:
- 神経根圧迫による放散痛
- 支配領域のしびれ感
- 対応する筋群の筋力低下
- 頚部神経根症:特定の頚神経圧迫による局所症状
- 腕神経叢障害:外傷や圧迫による上肢の複合的な神経症状