脊髄神経 Nervi spinales
概要
脊髄神経は脊髄から発生し、椎間孔を通って出てくる31対の神経群である (Standring, 2016)。以下の5群に分類される:
- 頚神経(C1-C8):8対
- 胸神経(T1-T12):12対
- 腰神経(L1-L5):5対
- 仙骨神経(S1-S5):5対
- 尾骨神経(Co1):1対
1. 解剖学的構造
1.1 神経根の構成
各脊髄神経は前根と後根の2つの神経根から構成される (Drake et al., 2020; Moore et al., 2022):
- 前根(運動根):脊髄の前外側溝から出る運動性神経繊維の束である。前角の運動ニューロンの軸索で構成され、骨格筋への運動指令を伝達する (Standring, 2016)。胸腰髄レベルでは交感神経節前線維も含まれる (Moore et al., 2022)。
- 後根(知覚根):脊髄の後外側溝から入る感覚性神経繊維の束である。後根神経節(脊髄神経節)内の偽単極性ニューロンの中枢突起で構成され、末梢からの感覚情報を脊髄へ伝達する (Drake et al., 2020)。
1.2 脊髄神経幹の形成と分枝
前根と後根は椎間孔またはその近傍で合流し、混合性の脊髄神経幹を形成する (Standring, 2016)。脊髄神経幹は非常に短く、椎間孔を出るとすぐに以下の4つの枝に分岐する (Moore et al., 2022):
- 前枝(腹側枝):最も太い枝で、体壁の前外側部、四肢、会陰部を支配する。胸部では肋間神経となり、頚部・腰仙部では神経叢(頚神経叢、腕神経叢、腰神経叢、仙骨神経叢)を形成する (Drake et al., 2020)。
- 後枝(背側枝):前枝より細く、体幹の後側部(脊柱起立筋群、背部皮膚)を支配する。内側枝と外側枝に分かれ、一定の分節性を保持する (Moore et al., 2022)。
- 交通枝:自律神経系との連絡を担う。白交通枝(T1-L2/L3レベルのみに存在し、交感神経節前線維を含む)と灰白交通枝(全レベルに存在し、交感神経節後線維を含む)がある (Standring, 2016)。
- 硬膜枝(髄膜枝):脊髄硬膜、椎間関節、椎体周囲組織の感覚を伝える細い枝である。疼痛の原因となることがあり、臨床的に重要である (Bogduk, 2005)。
1.3 脊髄神経節
脊髄神経節(後根神経節)は後根上に存在する膨大部で、偽単極性の一次感覚ニューロンの細胞体が集積している (Standring, 2016)。通常は椎間孔内または椎間孔のすぐ外側に位置するが、仙骨神経節は仙骨管内にある (Moore et al., 2022)。第1頚神経は後根が非常に小さいか欠如することがあり、後根神経節を持たない場合もある (Drake et al., 2020)。