舌下神経 Nervus hypoglossus [XII]
1. 基本的特徴と解剖学的位置
- 第12脳神経(XII)であり、純運動性の脳神経として機能する。
- 起始核は延髄下部の舌下神経核であり、背側正中近くに位置する。
- 舌下神経核の神経細胞は、舌の骨格筋を支配する下位運動ニューロンであり、その軸索は腹側へ走行する。
2. 解剖学的走行経路
- 延髄前オリーブ溝から10~15本の線維束として出現し、舌下神経管を通過して一つの神経幹となる。
- 迷走神経と内頚静脈の後外側から外側へ移行し、茎突舌骨筋と顎二腹筋後腹の内側を弓状に前下方へ走行する。
- 頚神経ワナ(C1、C2)からの交通枝を受け、顎舌骨筋の表面を横切って舌へ進入する。
- 走行中、頚静脈孔を通過する他の脳神経(迷走神経X、副神経XI、舌咽神経IX)と近接する。
3. 機能と神経支配
- 舌骨舌筋の外側で舌筋枝へ分枝し、舌筋群へ分布する。
- 舌の随意運動を支配し、発話、咀嚼、嚥下に必要な舌の運動を制御する。
4. 臨床的意義と症状
- 舌下神経麻痺が生じると、支配側の舌に片側性萎縮や運動障害が出現する。
- 舌の突出時に舌尖が患側へ偏位し、嚥下障害、構音障害、咀嚼障害などが生じる。
5. 神経学的検査法
- 舌の随意運動(突出、側方運動、挙上)の評価を行う。
- 舌の萎縮、線維束性収縮、偏位の有無を詳細に観察する。
- 嚥下機能、構音機能、咀嚼機能の障害の有無を総合的に評価する。