副神経 Nervus accessorius [XI]
概要
- 第十一脳神経(副神経)は、胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する純運動性の脳神経である。
- 直径約2.5mmの細い神経であり、頭蓋内での走行距離が最も長い脳神経の一つである。
- 左右の副神経は独立して存在し、それぞれ同側の筋肉を支配している。
解剖学的特徴と走行
- 起始核:延髄から頚髄上部(C1-C5)に位置する。
- 神経根の構成:
- 延髄根(3〜6本):延髄外側溝の後部から出る。
- 脊髄根(6〜7本):第1〜5頚髄の外側から出て上行し、頭蓋内に入る。
- 走行経路:
- 両根は頚静脈孔で合流し、共通幹を形成する。
- 頚静脈孔を通過後、頭蓋底から出て、同部位で他の神経との吻合を形成する。
神経分布と機能
- 頭蓋外での分岐:
- 内枝:迷走神経に合流する。
- 外枝:胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配し、第3・4頚神経と交通がある。
- 主要機能:首の回旋運動と肩の挙上運動の制御を担う。
臨床的意義と病態
- 副神経麻痺の原因:
- 主要症状:
- 胸鎖乳突筋と僧帽筋の機能障害。
- 肩の挙上困難と首の回旋運動制限。
- 片側性麻痺では肩甲骨の翼状突出(winging)が特徴的。
発生学的特徴
- 系統発生:特殊な脊髄神経の性質を有する。
- 由来の二重性:
- 延髄根:迷走神経と共通の発生起源を持つ。
- 脊髄根:頚髄神経の背側根に相同である。

J0834 (脳の底部:下方からの図)