前迷走神経幹

前迷走神経幹は、迷走神経の枝で、食道神経叢から起こる前面の小さな神経叢です。以下がその主な特徴です:

前迷走神経幹の主な枝には以下のものがあります:

前迷走神経幹は、腹部の自律神経系において重要な役割を果たしており、消化器系の機能調節に深く関わっています。

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J0924 (胸腔および腹腔にある左迷走神経:左側からの図)

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J0977 (腹腔神経叢:前面からの図)

日本人のからだ(宮木孝昌 2000)によると

解剖学用語(日本解剖学会, 1987)によると、腹部の迷走神経には前迷走神経幹(左迷走神経)と後迷走神経幹(右迷走神経)およびそれらの枝の前胃枝、後胃枝、肝枝、腹腔枝、腎枝があると記載されています。Mitchell(1953)によれば、前迷走神経幹の枝には前胃枝、幽門枝、肝枝および腹腔枝があり、後迷走神経幹の枝には後胃神経と腹腔枝があると記載されています(表106)。

迷走神経の腹部の枝は叢状や網状をつくり、血管などに絡みついて内臓に分布しています。そして、内臓に分布する神経叢には交感神経の線維と迷走神経の線維が含まれており、両方の線維を肉眼的観察によって区別することは難しいです。そこで、迷走神経の線維を含む神経や神経叢をそれぞれ左肝神経叢、右肝神経叢、前胃神経叢、後胃神経叢、左胃動脈神経叢、脾動脈神経叢、総肝動脈神経叢としました(表107)。

左右の迷走神経は食道の両側から胃の前後に回って噴門の右側に集まります。左右の迷走神経は噴門の右側で分岐し、それぞれ左胃動脈神経叢、前後の胃神経叢、左肝神経叢に連絡します。左迷走神経は食道の左側にそって下行し、噴門の前面を通って右側に現れます(図108)。ここで前迷走神経幹と名称を変えます。前迷走神経幹は噴門の右側で分枝し、左肝神経叢、前胃神経叢および左胃動脈神経叢に連絡します。右迷走神経は食道の右側をこれにそって走り、噴門で胃の後面に現れます(図109)。ここで後迷走神経幹と名称を変え、噴門の右側で分枝してそれぞれ後胃神経叢と左胃動脈神経叢に連絡します(図110)。