舌咽神経 Nervus glossopharyngeus [IX]
1. 基本的特徴
- 知覚・運動・味覚の神経線維を含む混合神経であり、延髄後外側溝から出現して頚静脈孔を通過し、上下の神経節を形成する。
2. 神経核の構成
- 主要な核として、味覚・内臓感覚を処理する孤束核、耳下腺への副交感性分泌を調節する下唾液核、および咽頭筋群への運動支配を行う疑核がある。
3. 機能と支配領域
- 咽頭筋層への運動支配、舌後方3分の1の味覚、咽頭粘膜への知覚支配を担う。
- 耳神経節への副交感神経節前線維を供給する。
4. 主要な分枝と神経叢
- 鼓室神経(耳管・中耳支配)、咽頭枝(咽頭神経叢形成)、および舌枝(舌後部と舌扁桃の感覚支配)がある。
5. 走行経路
- 延髄から頚静脈孔を通過後、内頸動脈外側を下行し、茎突咽頭筋と茎突舌筋間を通って舌根部に至る。
6. 神経節の特徴
- 頚静脈孔内に上神経節(感覚性)、その直下に下神経節(内臓感覚・味覚性)を有する。
7. 臨床的重要性
- 損傷により、舌咽神経痛(咽頭・舌根部の激痛)や嚥下・味覚障害が生じる。
- 頚静脈孔症候群では、迷走神経・副神経と共に障害される可能性がある。
8. 反射性機能
- 嚥下反射、頸動脈洞反射、および唾液分泌反射の重要な経路となる。

図511(頭蓋腔の位置)

図515(上顎神経と翼口蓋神経節)

図520(顔面神経の骨管内走行とその結合関係を外側から剖出した図)

図524(交感神経幹上部・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)