側頭枝(顔面神経の)Rami temporales (Nervus facialis)
解剖学的特徴
- 通常2~4本の枝が、耳下腺の上縁から出て、上前方に走行する。
- 頬骨弓を超えて上方に進む、3本程度の枝が存在する。
- 眼輪筋上部、前頭筋、側頭頭頂筋、耳介前部の筋肉に分布する。
- 側頭枝は頬骨弓の上を走行する際、浅側頭筋膜の深層を通過する。
- 顔面神経本幹から分かれた後、耳下腺内で複雑な吻合を形成する。
走行上の重要点
- 側頭部の手術の際には、頬骨弓上2cm付近を走行する側頭枝の損傷に注意が必要である。
- 側頭部への外科的アプローチの際は、側頭枝の走行に沿った切開を避けるべきである。
分布と出現頻度
- 側頭枝は1~6本存在し、3本(46.7%)が最も多く、次いで4本(30.9%)である。
- 前頭筋と側頭頭頂筋は、ほぼ完全に側頭枝による支配を受けている。
- 眼輪筋への分布は、主に側頭枝の上方枝によって支配されている。
- 耳介前筋への分布は変異が多く、側頭枝からの支配を受ける場合と受けない場合がある。
- 頬骨枝との吻合が存在し、これにより支配領域に重複が生じることがある。
臨床的意義
- 顔面神経の側頭枝は、顔の上部の表情筋を支配する重要な役割を果たしている。
- 側頭枝が損傷すると、前頭筋麻痺により眉毛の挙上が困難となり、患側の前額のしわ寄せができなくなる。
- 耳下腺手術や側頭部の形成外科手術において、側頭枝の走行に注意を払う必要がある。