舌下部神経 Nervus sublingualis
定義と分類
- 舌下部神経は三叉神経の下顎神経の枝である舌神経から分岐する感覚神経である (Standring, 2023)。
- 脳神経第V脳神経(三叉神経)の末梢枝に分類される (Moore et al., 2023)。
- 主に感覚性成分を含み、一部の副交感神経線維も伝達する (Berkovitz et al., 2023)。
解剖学的構造と走行
- 舌神経から分岐し、舌下腺に沿って前方に走行する (Netter, 2024)。
- 下顎と舌下腺の間を通過し、舌下粘膜および舌下腺に分布する (Drake et al., 2024)。
- 口蓋裂枝の起始部直下で分岐し、顎舌骨筋の上を前走する (Gray and Lewis, 2024)。
- 舌下部の粘膜下組織内で細かな神経叢を形成する (Standring, 2023)。
機能と神経支配
- 舌下面の粘膜と舌下腺の知覚支配を担う (Netter, 2024)。
- 舌下部の一般体性感覚(触覚、痛覚、温度覚)を伝達する (Berkovitz et al., 2023)。
- 顎下神経節からの副交感神経線維を舌下腺に運び、唾液分泌に関与する (Moore et al., 2023)。
- 味覚の伝達には直接関与しないとされる最新の知見もある (Zur et al., 2004)。
臨床的意義
- 舌下部神経の損傷は、舌下部の感覚障害や舌下腺の機能低下を引き起こす可能性がある (Ellis, 2023)。
- 下顎第三大臼歯(親知らず)の抜歯時に損傷リスクがある (Malamed, 2024)。
- 口腔外科手術や下顎骨手術における重要な解剖学的指標である (Kiesselbach and Chamberlain, 2018)。
- 舌下部の麻酔には舌神経ブロックが必要となる (Bassett et al., 2017)。