嗅神経 Nervi olfactorius [I]

J0902 (硬脳膜:上方からの図)

J0904 (硬脳膜と頭蓋骨を通る神経)

J0910 (右側の鼻壁の神経)

J0911 (鼻中隔の神経:左方からの図)
1. 解剖学的構造
1.1 基本構成
- 嗅神経は第I脳神経であり、嗅覚情報の伝達を専門とする特殊感覚神経である (Buck and Axel, 1991)。
- 嗅粘膜には約1,000万個の嗅細胞が存在し、各細胞は双極性ニューロンの構造を持つ (Firestein, 2001)。
- 嗅細胞の樹状突起は鼻腔内腔に向かって伸び、嗅繊毛を形成する。軸索は中枢に向かって伸びる。
1.2 神経線維の走行
- 無髄軸索からなる神経線維は、内側束と外側束の2列(各16~24本)を形成し、篩骨篩板の小孔を通過する (Doty, 2015)。
- これらの神経線維束は嗅糸(fila olfactoria)と呼ばれる。
- 篩板通過後、軸索は嗅球(olfactory bulb)に達し、その糸球体層(glomerular layer)において嗅球の二次ニューロン(僧帽細胞や房飾細胞)とシナプスを形成する (Mombaerts et al., 1996)。
1.3 細胞構築
- 神経細胞体(第一次ニューロン)は、鼻腔上部の嗅上皮(olfactory epithelium)に局在する (Schwob, 2002)。
- 嗅上皮は偽重層円柱上皮で構成され、嗅細胞、支持細胞、基底細胞の3種類の細胞を含む。
- 末梢から中枢への経路:嗅上皮 → 篩板通過 → 嗅球到達という直接的な投射経路を持つ。
- 他の感覚神経系と異なり、感覚細胞自体が一次求心性線維となる特殊な構造を有する(感覚神経節を介さない)。
1.4 嗅球の構造
- 嗅球は前頭蓋窩の篩板上に位置し、前脳の一部である。
- 嗅球は層構造を持ち、外側から順に糸球体層、外網状層、僧帽細胞層、内網状層、顆粒細胞層からなる (Shepherd et al., 2004)。
- 各嗅細胞は特定の嗅覚受容体を発現し、同じ受容体を持つ嗅細胞の軸索は嗅球内の特定の糸球体に収束する (Mombaerts et al., 1996)。