後根(脊髄神経の)Radix posterior (Nervus spinalis)

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J0815 (下部脊髄の終端と神経根:前方からの図)

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J0825 (二つの神経の根を持つ脊髄の一部、半分は模式的:前方からの図)

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J0826 (脊髄を被鞘で挟む、背面からの図)

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J0828 (脊椎と筋の断面図)

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J0835 (脳幹:右方からの図)

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J0840 (後脳および延髄:左外側からの図)

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J0889 (神経要素の主要な関係は、横断面および縦断面で図示)

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J0918 (頭蓋骨内の舌咽神経、迷走神経、副神経の経過:後方からの図)

基本構造と組織学的特徴

脊髄神経の後根は、脊髄神経節の神経芽細胞の中枢性突起から形成される感覚性神経線維の束である (Standring et al., 2021)。後根の線維は脊髄に入ると、長い上行枝と短い下行枝に分岐し、脊髄灰白質の細胞とシナプス結合を形成する (Kiernan and Rajakumar, 2023)。上行枝の一部は、延髄の楔状束核(Burdach核)と薄束核(Goll核)に終止し、意識的な触覚や固有受容覚の伝達に関与する (Standring et al., 2021)。

後根線維は主に有髄神経線維で構成され、直径の異なる線維群が混在している。大径のAβ線維は触覚や振動覚を伝達し、小径のAδ線維やC線維は痛覚や温度覚を伝達する (Kandel et al., 2021)。後根神経節細胞は偽単極性ニューロンという特殊な形態を持ち、末梢と中枢の両方向に軸索を伸ばす (Kiernan and Rajakumar, 2023)。

解剖学的走行と関係

後根は、脊髄神経節から中枢側に向かって脊髄後外側溝に入る (Drake et al., 2020)。後根は硬膜を貫通する際に前根と合流して共通の硬膜鞘を形成し、脊髄神経を構成する (Moore et al., 2022)。後根の太さや根糸の数は脊髄のレベルによって異なり、腰部や仙骨部で最も太くなる (Moore et al., 2022)。これは下肢からの豊富な感覚情報を反映している。

後根の空間的配置はデルマトーム(皮膚分節)の区分けと密接に関連しており、各後根は特定の皮膚領域からの感覚情報を伝達する (Netter, 2019)。後根神経節は椎間孔内またはその近傍に位置し、その大きさと位置は各脊髄分節で異なる特徴を示す (Drake et al., 2020)。椎間孔内での後根の走行パターンには個体差が認められ、臨床的に重要な解剖学的変異となる (Moore et al., 2022)。

神経伝達物質と機能的特徴

後根神経節細胞の多くは、グルタミン酸を主要な興奮性神経伝達物質として使用する (Kandel et al., 2021)。後根を通る感覚情報には、触覚、圧覚、痛覚、温度覚、固有受容覚などが含まれ、これらは異なる受容体と神経線維によって伝達される (Kiernan and Rajakumar, 2023)。

後根は感覚情報の伝達経路として、末梢から中枢神経系への重要な入力経路を形成する (Netter, 2019)。後根神経節は感覚ニューロンの細胞体を含む重要な神経組織構造であり、感覚情報の一次処理と調節に関与する (Standring et al., 2021)。後根神経節細胞には、機械受容器、侵害受容器、温度受容器など、多様な感覚受容器からの入力が収束する (Kandel et al., 2021)。

発生学的特徴

後根は神経堤細胞から発生し、胎生初期に脊髄神経節を形成する (Sanes et al., 2019)。発生過程で神経堤細胞は背側から腹側に移動し、後根神経節の位置を決定する (Sanes et al., 2019)。後根神経節細胞は、末梢と中枢の両方向への軸索伸長を特徴とする偽単極性ニューロンに分化する (Kiernan and Rajakumar, 2023)。

神経堤細胞の移動と分化は、複数の分子シグナルによって制御され、Neurotrophin-3(NT-3)やNerve Growth Factor(NGF)などの神経栄養因子が重要な役割を果たす (Sanes et al., 2019)。発生過程での異常は、先天性感覚異常や神経発達障害の原因となる可能性がある (Standring et al., 2021)。

臨床的意義

後根神経節の炎症や圧迫は、帯状疱疹や神経根症などの疾患の原因となる (Ropper et al., 2019)。帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節に潜伏し、再活性化することで発症する (Ropper et al., 2019)。神経根症は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによる後根の圧迫で生じ、対応するデルマトームに沿った痛みやしびれを引き起こす (Moore et al., 2022)。

後根の障害は、対応する皮膚分節の感覚脱失を引き起こす (Drake et al., 2020)。後根切断術(dorsal rhizotomy)は、重度の慢性疼痛や痙縮の治療法として歴史的に用いられてきたが、現在では選択的後根切断術がより精密な治療法として用いられている (Ropper et al., 2019)。後根への局所麻酔薬注入は、診断的および治療的神経ブロックとして臨床応用されている (Moore et al., 2022)。

参考文献