脊髄神経の後根は、脊髄神経節の神経芽細胞の中枢性突起が集まってできます。後根の線維は脊髄に入ると、長い上行枝と短い下行枝に分かれます。上行枝と下行枝はともに灰白質の細胞とシナプス結合します。上行枝の一部は延髄の楔状束核(Burdach核)と薄束核(Goll核)に終止します。
J0889 (神経要素の主要な関係は、横断面および縦断面で図示)
日本人のからだ(熊木克治 2000)によると
第1頚神経後根
第1頚神経(C1)後根は細く、根糸の数も少ない。C1後根の太さ、走行様式、副神経脊髄根(XI)との交通関係などは多様です(図49)。金沢大学解剖学実習体(1968-1969年)の調査(熊木、1970)によると、肉眼的観察では50側中4側でC1後根根糸を認めませんでした。後外側溝から出る典型的後根(s系列)は46側中23側に認められます。残りの23側は後外側溝より前方(腹側)に偏位して出現する(a系列)です。どちらの型でも半数以上(27/50側)の例で、XI幹に一度合流した後、C1後根としての走行や態度をとります。C1の脊髄神経節は46側中37側に認められます。米粒大(被膜を含む)を呈するものが多い(30側)ですが、より小さいものもあります(7側)。典型的な位置である硬膜外にあるものは27側で、後根上でもわずかに近位寄りの硬膜内に位置するもの(10側)も存在します。
水浸しにした材料を立体顕微鏡で観察した結果、C1後根が新たに発見された例や他の多くの報告を表67に示しました。47側についてC1後根がXIと結合する関係を解析すると、後糸の線維の起始、走行などは多様な態度をとっていることが明らかとなりました。C1根糸の起始の高さによって、上、中、下の3部分に区分し、それぞれの特徴を分析しました(図50)。
以上のようなC1後根がSC1s a、MC1s a、IC1s-a、C2-1 s-aの中から一つだけで構成される単独型は27側に認められます。C1後根全体(SC1、MC1、IC1)を見ると、a系列とs系列の間には脊髄神経節などの特性に差異があると考えられます。すなわち、s系列の脊髄神経節は、a系列のものに比べて、大きさがゴマ粒大から米粒大のものが多く(16側)、その位置は硬膜外(10側)、すなわち標準的な位置に多く存在します。
一方、SC1、MC1、IC1という区分の異なる複数根で構成される複合型の例は20側に存在しますが、例外的な1例を除いて脊髄神経節の大きさは大きい(19側)、脊髄神経節の位置は硬膜外に位置する(19側)という結果であり、s系列とa系列との差は明らかではないと言えます。C2の脊髄神経節が全脊髄神経節の中で最大級に属するのに対して、C1の神経節は小さく、ゴマ粒大から米粒大でC2の1/10程度です。一般に紡錘形ですが、小さくなるほど球状になる傾向があります。一般的に赤味を帯びて見えますが、明らかな膨大を作らない場合でも被膜を除去して実体顕微鏡で観察すれば、粒状の細胞集団が認められます。37/47側はゴマ粒大から米粒大を呈しますが、7側ではゴマ粒大より小さいもの(+)が認められます。さらに組織学的検査により初めて存在が確認された痕跡的な脊髄神経節が3側に見られました。すなわち、後根が存在する47側すべてに、小さくとも必ず脊髄神経節が存在していました。
舌下神経にも脊髄神経節が出現する(Froriep, 1882)と言われていますが、舌下神経の後根、すなわち舌下神経に対応する脊髄神経節と思われるものは痕跡も認められませんでした。