前交連 Commissura anterior
解剖学的特徴
- 第三脳室前壁の終板後方に位置し、自転車のハンドル状の横走線維束である (Kandel et al., 2021)。
- 脳弓柱の吻側で正中線を横切り、密な線維束を形成している。
構造と機能
- 前部は、両側の嗅球を連絡している(肉眼的には不明瞭)(Paxinos and Mai, 2020)。
- 後部は、両側の中側頭回・下側頭回を連絡する主要部分である。
- 嗅覚情報の統合と、側頭葉間の神経連絡に重要な役割を果たしている (Brodal, 2023)。
解剖学的位置関係
- 視床下部の前方、視交叉の背側に位置している。
- 前柱の前方を横断し、両側の側頭葉へと広がっている (Nieuwenhuys et al., 2022)。
- 終板を貫通して両側に伸びる白質線維束を形成している。
発生学的意義
- 終脳で最も早期に形成される交連線維束の一つである (Rakic and Yakovlev, 2019)。
- 胎生期における大脳半球間の初期連絡において、重要な役割を担っている。
臨床的意義
- 前交連の損傷は、両半球間の情報伝達に障害をもたらす可能性がある (Gray et al., 2024)。
- 脳腫瘍や脳血管障害による前交連の障害は、嗅覚障害や記憶障害を引き起こすことがある。
研究・歴史的背景
- 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、神経解剖学者により詳細な構造が明らかにされた。