前障 Claustrum
解剖学的特徴
- 大脳深部の薄い灰白質層であり、レンズ核と島の間に位置する板状の核である (Crick and Koch, 2005)。
- 外包とレンズ核の間、および最外包と島皮質の間に存在し、前交連から側頭葉前部に至る (Mathur, 2014)。
機能と結合
- 大脳皮質と強い双方向性の神経結合を有し、意識、注意、感覚統合などの高次脳機能に関与している (Goll et al., 2015)。
- 視床核および扁桃体からの入力を受け、大脳皮質へ広範に投射している (Smith et al., 2019)。
臨床的意義
- 損傷により、意識状態の変化や認知機能障害を引き起こす可能性がある (Koubeissi et al., 2014)。
- てんかんの発作焦点となりうるほか、さまざまな精神疾患との関連が示唆されている (Smythies et al., 2012)。
発生学
- 終脳由来の構造物であり、大脳基底核の一部として発達する (Watson et al., 2012)。
- 胎生期における神経細胞の遊走と分化により、特徴的な層状構造を形成する (Kim et al., 2016)。
検査・画像診断
- MRIやCTなどの画像検査で同定可能だが、その薄い構造のため詳細な観察には高解像度の撮像が必要 (Torgerson et al., 2015)。
- 特に7テスラMRIなどの高磁場MRIでは、前障の微細構造をより明確に観察できる (Wang et al., 2017)。
研究の最新動向
- 神経科学研究において、意識の統合や多感覚統合における前障の役割が注目されている (Jackson et al., 2020)。
- 最新の研究では、前障が感情処理や社会的認知にも関与している可能性が示唆されている (Druga, 2014)。
参考文献