海馬 Hippocampus
解剖学的特徴
- 側脳室下角の内側壁に位置し、特徴的な弯曲した海馬溝を有する (Andersen et al., 2023)。
- 前端部上面には海馬指(海馬足)と呼ばれる突起があり、側脳室表面は海馬白板で覆われている。
- CA1~CA4の亜核を持ち、分子層、錐体細胞層、多形細胞層に区分される (Strange et al., 2021)。
機能と重要性
- 短期記憶の形成において重要な役割を担う (Eichenbaum, 2022)。
- 両側が損傷すると、最近の記憶が喪失する可能性がある。
臨床的意義と特性
- アルツハイマー病における早期萎縮の好発部位であり、てんかんの発作源となりやすく、また虚血に対して特に脆弱である (Small et al., 2024)。
- 成体脳においても神経新生が生じており、環境刺激に応じて神経回路を再構築することができる (Kempermann, 2023)。
- 学習や記憶形成に伴うシナプスの可塑的変化が顕著に観察される。
神経連絡と解剖学的関係
- 海馬体は歯状回、海馬台、海馬采を含む海馬形成体の主要部分を構成する (Buzsáki and Tingley, 2022)。
- 貫通線維を介して嗅内野からの入力を受け、海馬采を通じて乳頭体へ出力を送る。
- 扁桃体や中隔核とも密接な神経連絡を持ち、情動や自律機能の調節にも関与する。
発生学的特徴
- 大脳皮質の一部が内側に巻き込まれる形で発生し、古皮質に属する (Rakic, 2024)。
- 胎生期から生後初期にかけて急速な発達を遂げ、神経回路の基本的構造が形成される。
神経伝達物質と受容体