終板 Lamina terminalis

脳の断面(模式図を含む)

外眼角耳孔面水平な面Qに対応する断面.png

MRI_05にほぼ対応する外眼角耳孔面に水平な断面

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J0829 (10.4mm頂殿長の人間の胎児の脳、右半分:左方からの図)

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J0833 (脳幹:脳の正中断面を左側からの図)

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J0834 (脳の底部:下方からの図)

1. 解剖学的構造

1.1 肉眼解剖学的特徴

終板は第三脳室の吻側壁を形成する三角形状の薄い膜状組織であり、前交連と視交叉の間に位置する (Paxinos and Mai, 2021)。この構造は厚さ約0.1-0.5mmの繊細な膜で、その上端は前交連の前縁に、下端は視交叉の上面に連続している (Standring, 2023)。

1.2 組織学的構成

組織学的には外層と内層の二層構造を示す。外側は脳軟膜で覆われ、内側は上衣細胞層によって第三脳室腔に面している (Ding et al., 2020)。内層は主に神経膠細胞、特にアストロサイトの突起で構成されており、これらが密なネットワークを形成している (Zhang and Watson, 2023)。血管周囲には周皮細胞とアストロサイト終足が豊富に存在し、血液脳関門の構造的基盤を形成している。

1.3 血管支配

終板の血液供給は主に前交通動脈から分岐する微小血管によって行われる (Ding et al., 2020)。前交通動脈は終板の前面を走行し、穿通枝を出して終板実質内に分布する。この血管の走行パターンには個体差があり、前交通動脈との位置関係も多様性を示す (Wang et al., 2024)。静脈還流は主に前視床下部静脈系を介して行われる。

1.4 周囲構造との関係

終板は重要な神経解剖学的ランドマークとして機能する。前方には視交叉が位置し、後方には前交連、上方には透明中隔が存在する (Standring, 2023)。終板は第三脳室の前壁の一部を形成し、脈絡叢や視床下部と密接な関連を持つ。特に視索前野および視床下部前部との機能的連携が重要である (Chen et al., 2025)。

2. 発生学

2.1 初期発生過程

終板は神経管の最吻側部から発生する構造である。胎生期の初期段階では神経上皮性の薄い膜として形成され、この時点では単層の神経上皮細胞から構成される (O'Rahilly and Müller, 2021)。神経管閉鎖の完了後、前脳胞の最吻側部が終板の原基となる。

2.2 分化と成熟

周囲の神経組織、特に視床下部と大脳半球の発達に伴って、終板の構造が段階的に確立される (O'Rahilly and Müller, 2021)。胎生8週頃から終板の二層構造が明確になり始め、神経膠細胞の移動と分化が進行する。血管新生も同時期に活発化し、成熟した血管網が形成される。

3. 機能

3.1 脳脊髄液循環における役割

終板は脳脊髄液の産生・循環に関与する重要な構造である。終板を介した物質交換により、第三脳室内の脳脊髄液の組成調節が行われる (McKinley et al., 2022)。また、終板は脳脊髄液の恒常性維持において、従来考えられていた以上に重要な役割を果たしていることが明らかになってきている (Smith and Brown, 2024)。

3.2 血液脳関門機能