下側頭回 Gyrus temporalis inferior
解剖学的特徴
- 側頭葉下外側面に位置し、中側頭回との境界は、下側頭溝(sulcus temporalis inferior)により形成される (Brodmann, 1909)。
- 側頭葉底面では、後頭側頭溝(sulcus occipitotemporalis)により、内側後頭側頭回と区分される (Gray and Lewis, 2015)。
- 後方は後頭葉外側面へと連続し、明確な境界は存在しない。
- 皮質は6層構造を示し、特に第III層とV層には大型の錐体細胞が存在する (Von Economo and Koskinas, 1925)。
神経連絡
- 一次視覚野(V1)からの視覚情報を、腹側視覚路を介して受け取る (Mishkin et al., 1983)。
- 前方部は側頭葉極や扁桃体と、後方部は後頭葉視覚領域と、密接な線維連絡を持つ (Kravitz et al., 2013)。
- 両側性の投射を受けており、同側優位である。
機能
- 視覚情報の高次処理(形態認識、色彩認識)を担う (Tanaka, 1996)。
- 物体認識と顔認識の神経基盤として機能する (Kanwisher et al., 1997)。
- 視覚的意味記憶の形成と保持に関与する (Martin and Chao, 2001)。
臨床的意義
- 下側頭回病変により、以下の症状が出現する:
- 視覚性失認:物体の形態認識障害
- 相貌失認:顔の認識障害(特に右半球病変で顕著)
- 色彩失認:色の認識や識別の障害
- てんかん焦点として機能することがあり、視覚性の前兆症状を伴うてんかん発作の原因となりうる (Blümcke et al., 2017)。
- 脳梗塞、腫瘍、外傷による障害では、永続的な視覚認知障害を引き起こす可能性がある。
参考文献
書籍