上頭頂小葉 Lobulus parietalis superior
解剖学的特徴:
- 頭頂間溝によって下頭頂小葉と区別される、頭頂葉の一部である (Brodmann, 1909)。
- 前方の領域5(体性感覚連合野)と、後方の領域7(多感覚連合野)に分かれる (Scheperjans et al., 2008)。
- 領域7は、体性感覚、視覚、聴覚、前庭覚の統合による空間知覚を担う (Mountcastle, 1995)。
神経連絡:
- 一次体性感覚野との双方向性の連絡があり、また視覚野からの入力を受ける (Goldman-Rakic, 1988)。
- 運動前野への出力と、前頭前野との相互連絡を持つ (Cavada and Goldman-Rakic, 1989)。
臨床的意義:
- 左半球損傷では、空間認知障害や道具使用の障害(失行症)が生じる (Heilman and Rothi, 1993)。
- 右半球損傷では、左側視空間への注意障害が起こりうる (Husain and Nachev, 2007)。
重要な機能:
- 手の精密な動きと目の協調運動の制御に関与する (Culham and Valyear, 2006)。
- 三次元空間における物体の位置や動きの認識に重要な役割を果たす (Andersen et al., 1997)。
- 空間的作業記憶の処理に関与する (Koenigs et al., 2009)。
発達と可塑性:
- 生後の視覚・触覚経験により機能的な結合が形成される (Berlucchi and Buchtel, 2009)。
- 運動学習や技能習得により神経回路の再構成が起こる (Dayan and Cohen, 2011)。
治療とリハビリテーション:
- 損傷後の回復には、視覚-運動協調訓練が重要である (Smania et al., 2003)。