上前頭溝 Sulcus frontalis superior
解剖学的特徴と位置
- 大脳前頭葉上面を前後に走行する主要な溝であり、中心前溝から前方へと延びている (Rhoton, 2020)。
- 上前頭回と中前頭回との境界を形成し、前頭葉背側部において中心前溝と連続している (Mai et al., 2021)。
- 前頭葉の背外側面に位置しており、内側には上前頭回、外側には中前頭回が接している。
発達と臨床的意義
- 胎生期早期から形成が開始される主要な脳溝の一つである (Chi et al., 2019)。
- 脳神経外科手術時のナビゲーションに使用される重要な解剖学的指標となっている (Yasargil, 2018)。
- 前頭葉の機能的区分を理解するための重要なランドマークとして活用されている。
機能と周辺領域の関係
- 前頭前野の実行機能に関連する領域を区分する重要な解剖学的指標である (Miller and Cohen, 2021)。
- 上前頭回は主に運動計画と実行機能に関与し、中前頭回は作業記憶や注意制御に関与している (Petrides, 2019)。
- この溝の走行パターンには個人差があり、脳機能マッピングの際には注意が必要である。
周辺の血管支配
- 主に前大脳動脈の皮質枝により血液供給を受けている (Ono et al., 2022)。
- 中大脳動脈の前頭枝も一部の領域に血液を供給している。
病変・損傷による影響
- 上前頭溝周辺の病変は、高次運動機能や実行機能に影響を及ぼす可能性がある (Stuss and Knight, 2020)。
- 脳梗塞や腫瘍による損傷は、運動計画や意思決定能力の低下を引き起こすことがある。
- 画像診断において、この溝の偏位は周辺の病変を示唆する重要な所見となりうる。