中心前回 Gyrus precentralis
解剖学的特徴
- 中心前回は、大脳半球外側面の中心溝前方に位置する隆起部分であり、随意運動の制御を担う運動野である (Penfield and Boldrey, 1937)。
- 前頭葉に位置し、一次運動野(ブロードマン4野)を含む、重要な運動機能の中枢である (Brodmann, 1909)。
機能と構造
- 運動相同表現(運動ホムンクルス)に従い、身体各部位の運動制御領域が、系統的に配置されている (Penfield and Rasmussen, 1950)。
- 前頭前野と運動前野の後方に位置し、皮質脊髄路(錐体路)の起始部として、随意運動の開始と制御に重要な役割を果たしている (Porter and Lemon, 1993)。
臨床的意義
- 中心前回の損傷は、対側の身体部位の運動麻痺(片麻痺)を引き起こす可能性がある (Strick, 1988)。
- 脳卒中、腫瘍、外傷などによる中心前回の障害は、運動機能の重大な障害につながる (Ward, 2017)。
発生学的特徴
- 胎生期における大脳皮質の発達過程で、運動機能の分化に伴って形成される (Rakic, 1988)。
- 生後の運動学習と経験により、さらなる機能的成熟が進む (Kandel et al., 2013)。
研究と応用
- 脳機能マッピング技術の発展により、中心前回の機能的な構造がより詳細に解明されている (Gazzaniga et al., 2019)。
- ニューロリハビリテーションや脳‐機械インターフェース(BMI)の開発において、中心前回の理解は重要な基盤となっている (Lebedev and Nicolelis, 2017)。
個体差と可塑性
- 個人間で中心前回の大きさや形状に若干の違いが見られるが、基本的な機能的配置は保持されている (Amunts et al., 1996)。
- 神経可塑性により、損傷後の機能回復や運動学習による機能的再編成が可能である (Nudo, 2013)。
参考文献