乳頭体視床束 Fasciculus mammillothalamicus
基本構造と経路
- 乳頭体視床束は、乳頭体と視床前核を接続する神経線維束であり、乳頭被蓋束とともに乳頭体背側から出る (Vann and Nelson, 2015)。
- 乳頭体内側核の線維は同側の視床前核へ、また、外側核の線維は両側の視床前背側核へと投射する (Aggleton et al., 2010)。
解剖学的位置
- 乳頭体背側部から起始し、視床下部を通過して、視床前核群に終わる (Shah et al., 2012)。
機能的・臨床的意義
- 記憶や空間認知に関わる重要な神経経路である (Vann, 2010)。
- Papez回路の構成要素として、情動と記憶の処理に重要な役割を果たしている (Aggleton and Brown, 1999)。
- この経路が損傷を受けると、特にエピソード記憶に関する記憶障害を引き起こす可能性がある (Carlesimo et al., 2011)。
別称
- Vicq d'Azyr's bundle(ヴィック・ダジール束)としても知られている。
研究の歴史と発見
- この神経束は、フランスの解剖学者フェリックス・ヴィック・ダジール(Felix Vicq d'Azyr、1748-1794)によって最初に記載された (Parent, 2012)。
- その後の神経解剖学的研究により、この経路の詳細な走行と機能的重要性が明らかにされた (Vann and Aggleton, 2004)。
神経科学的特徴
- 主に有髄神経線維で構成されている (Wright et al., 2010)。
- 視床下部を通過する際、他の神経束(特に脳弓)と解剖学的に近接している (Vann, 2010)。
- 乳頭体からの求心性線維と、視床前核からの遠心性線維を含む双方向性の経路である (Dillingham et al., 2015)。
参考文献