虫部葉[第VII A小葉]Folium vermis [VII A]
詳細解剖学的構造
- 小脳虫部の後葉に属する薄い葉状構造で、左右の上半月小葉(lobulus semilunaris superior)を連結する正中部の帯状構造である (Schmahmann et al., 2000)。
- 小脳小葉分類におけるLarsell命名法ではVIIA小葉に相当し、Bolk分類では後葉の一部として分類される。
- 微細構造学的には、表層から分子層、プルキンエ細胞層、顆粒層の3層構造を持つ小脳皮質で覆われている (Voogd & Glickstein, 1998)。
位置関係と境界
- 背側面では前葉裂(fissura prima)と後葉裂(fissura secunda)の間に位置している。
- 前方は中心小葉(lobulus centralis)および山頂(culmen)と接し、後方は錐体(pyramis)と接している。
- 虫部葉の白質は小脳髄体(corpus medullare cerebelli)と連続しており、内部に歯状核などの小脳核への投射線維を含む (Standring, 2021)。
神経線維連絡
- 虫部葉には脊髄小脳路や前庭小脳路からの求心性線維が終止し、前庭核や網様体核への遠心性線維を送出する (Ramnani, 2006)。
- 苔状線維(mossy fibers)と登上線維(climbing fibers)が主な入力経路であり、プルキンエ細胞の軸索が主な出力経路となる。
- 小脳皮質内では平行線維による情報統合が行われ、長期抑圧(LTD)などのシナプス可塑性が運動学習の基盤となっている (Ito, 2002)。
機能と臨床的意義
- 虫部葉を含む小脳後葉は、主に運動の計画、開始、タイミング制御において重要な役割を担っている (Stoodley & Schmahmann, 2018)。
- 前庭小脳系との連携により、姿勢制御や歩行の円滑性に寄与している。
- 虫部葉の選択的損傷は、体幹失調(truncal ataxia)や歩行時の動揺(gait ataxia)を引き起こす (Schmahmann, 2019)。
- アルコール性小脳変性症では、虫部葉を含む虫部の萎縮が特徴的であり、歩行障害の原因となる (Sullivan et al., 2010)。
画像診断学的特徴
- MRI矢状断像において、虫部葉は前葉裂と後葉裂に挟まれた構造として同定可能である (Woolsey et al., 2017)。