小脳虫部[第I-X小葉]Vermis cerebelli [I-X]
基本構造と位置
- 小脳虫部は、小脳正中部に位置する無対の構造で、系統発生学的に古い部分である (Voogd & Glickstein, 2023)。
- 上虫(小脳小舌、中心小葉、小山、虫部葉)と下虫(虫部隆起、錐体、虫部垂、虫部小節)に大別される (Schmahmann et al., 2021)。
神経解剖学的特徴
- 前庭神経核群、橋、延髄の網様体へ投射し、平衡感覚と姿勢制御に重要な役割を果たす (Apps & Garwicz, 2020)。
- プルキンエ細胞の軸索は、室頂核に終止する (Sugihara, 2022)。
機能的分化
- 前葉(第I-V小葉)は、運動制御と姿勢維持を担当する (Buckner, 2021)。
- 後葉(第VI-IX小葉)は、認知機能や情動処理に関与する (Habas et al., 2024)。
- 小節小葉(第X小葉)は、特に前庭機能との関連が強い (Barmack, 2023)。
臨床的意義
- 損傷により、平衡障害、歩行失調、眼球運動障害などの症状が生じることがある (Stoodley & Schmahmann, 2023)。
発生学的な観点
- 小脳虫部は発生学的に最も古い小脳の部分で、系統発生的に原始小脳(古小脳)に由来する (Butts et al., 2022)。
- 胎生期において、菱脳唇から発生し、正中部で最初に形成される (Legué et al., 2021)。
解剖学的な層構造
- 表面から深部に向かって、分子層、プルキンエ細胞層、顆粒層の3層構造を持つ (White & Sillitoe, 2023)。
- 小脳皮質の基本的な神経回路を形成し、入力情報の統合と処理を行う (D'Angelo, 2024)。
線維連絡