





J0883 (大脳脚の方向に切断した脳の断面:前方からの断面図)
小脳半球は小脳の主要部分を構成し、左右対称に配置されている。第II小葉(H II)から第X小葉(H X)までの9つの半球小葉から成り、正中部の小脳虫部の外側に位置する(Voogd and Glickstein, 2023)。各半球小葉は小脳溝により明確に区画され、対応する虫部小葉と解剖学的連続性を保っている(村上, 2024)。
小脳半球表面は小脳皮質で覆われ、灰白質(皮質)と白質から構成される。小脳皮質は特徴的な3層構造を呈し、表層から分子層、プルキンエ細胞層、顆粒層が配列する(D'Angelo and Casali, 2024; 藤田・藤田, 2023)。分子層には顆粒細胞軸索が分岐して形成される平行線維が存在し、プルキンエ細胞の樹状突起と広範なシナプスを形成する。また、下オリーブ核から直接投射する登上線維がプルキンエ細胞に強力なシナプス結合を形成している(D'Angelo and Casali, 2024)。
**入力系:**大脳皮質からの情報は橋核を経由して苔状線維として小脳半球に入力される。また、下オリーブ核からの登上線維による直接入力も受ける(Ito, 2022)。**出力系:**小脳半球からの出力は歯状核を経由し、視床を介して最終的に大脳運動野へ投射される(Schmahmann et al., 2023)。各半球小葉は大脳皮質の特定領域と機能的に対応し、運動制御のみならず認知機能や情動制御にも関与している(Schmahmann et al., 2023)。
小脳半球は胎生期に菱脳唇から発生し、後脳胞より派生する。発達過程において著しい体積増加と複雑な層構造の形成が観察される(Hatten and Roussel, 2024)。系統発生学的には「新小脳(neocerebellum)」に分類され、哺乳類、特に霊長類において顕著に発達している。これは高度な運動制御能力および認知機能の獲得と密接に関連している(Voogd and Glickstein, 2023)。
小脳半球は主として上小脳動脈(superior cerebellar artery: SCA)と前下小脳動脈(anterior inferior cerebellar artery: AICA)により血液供給を受けている。上小脳動脈は小脳半球の上部を、前下小脳動脈は前下部を主に灌流する(Rhoton, 2023)。
小脳半球の主要機能は協調運動の制御である。運動の精密な調節、運動学習、姿勢制御において中心的役割を果たす(Schmahmann et al., 2023)。小脳半球は高度な神経可塑性を有し、運動学習により神経回路の再構築が可能である。特にプルキンエ細胞と平行線維間のシナプスにおいて長期抑圧(long-term depression: LTD)などの可塑的変化が顕著である(Ito, 2022)。
小脳半球の障害により、病巣同側に以下の症状が出現する(Manto and Mariën, 2024; 河村・平山, 2024):