菱形窩

菱形窩は菱形を形成し、正中溝によって左右に分割され、境界溝によって内外の領域に区切られます。正中口から外側へは第四脳室髄条が走り、これにより菱形窩は上下にさらに分けられます。上部には、境界溝の内外に内側隆起と前庭神経野が存在します。内側隆起の中央には顔面神経丘があり、そこには顔面神経膝とその腹側にある外転神経核の二つの部分があります。前庭神経野は前庭神経核の位置に相当します。前庭神経野の外側にある凹みは上窩と呼ばれ、これより鼻側には青斑が帯状を形成して伸びています。青斑核はその内部に存在します。菱形窩の下部の内側には舌下神経核があり、その外側には迷走神経三角(灰白翼)があり、迷走神経背側核が存在します。その鼻側端の窩は下窩と呼ばれます。

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J0814 (脊髄:後方からの図)

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J0836 (菱形窩:後方からの図)

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J0837 (菱形窩:後方からの模式図)

日本人のからだ(後藤 昇・国府田 稔 2000)によると

上、中、下の小脳脚を切断すると、小脳が取り除かれ、第四脳室が見えるようになります。第四脳室の底面に当たる脳幹の背面には菱形の構造が見えます。この部分が菱形窩で、その詳細はShimadaの研究(1921/1922 a,b, 1939 a)により説明されており、測定値は表13に示されています。菱形窩には主に横に走る髄条(medullary striae)があり、これはヒト特有のものです。Fuse (1919)と島田(1949 b)による髄条の研究があり(図22)、島田(1949 b)によれば、男女合わせて30例の脳で髄条が欠けているものはなく、髄条の数は3-11条とされています。また、第四脳室外側口(Luschka孔)の形態についても、50例の日本人脳に対する詳しい観察があり、盲嚢型13側、破嚢型4側、花籠型83側などの分類と頻度が報告されています(Shimada, 1935; 島田,1939 a)。

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図18 脳幹背面と菱形窩Fossa rhomboidea (後藤, 1971a,1986a, 1987)

図18 脳幹背面と菱形窩

AQC: 中脳水道、AV: 前庭神経野、CAS: 筆尖、CF: 顔面神経丘、CS et CI: 上丘と下丘、EM: 内側隆起、FC: 楔状束(Burdach)、FG: 薄束(Goll)、FOI: 下窩、FOS: 上窩、FUL: 側索、LC: 青斑、OB: カンヌキ、PCI: 下小脳脚、PCM: 中小脳脚、PCS: 上小脳脚、SIMP: 後中間溝、SL: 限界溝、SLP: 後外側溝、SM: 正中溝、SMP: 後正中溝、SMVIV: 第四脳室髄条、TC: 灰白結節、TEVIV: 第四脳室ヒモ、TNC: 楔状束結節、TNG: 薄束結節、TNH: 舌下神経三角、TNV: 迷走神経三角

表13 菱形窩の計測値