菱形窩 Fossa rhomboidea
基本構造
- 菱形窩は、第四脳室底面を形成する脳幹背側部の菱形の凹みであり、正中溝により左右に分けられる (Lang and Wachsmuth, 2022)。
- 正中溝および境界溝により、内側部と外側部に区分される。
主要な構成要素
- 上部には、内側隆起と前庭神経野が存在し、顔面神経丘と青斑を含む (Williams et al., 2023)。
- 下部には、舌下神経核(内側)と迷走神経三角(外側)が位置する。
- 第四脳室髄条により上下に区分され、上窩と下窩の凹みを有する。
解剖学的特徴
- 日本人の研究により、髄条は3~11条存在し、調査した30例の脳すべてで確認された (Goto and Koda, 2000)。
- 菱形窩の大きさは、矢状径が平均34.7mm(男性35.5mm、女性33.9mm)、横径が平均22.2mm(男性22.5mm、女性21.9mm)である (Goto and Koda, 2000)。
臨床的意義
- 菱形窩は脳幹部の重要な解剖学的構造であり、多くの脳神経核が存在する領域である (Matsushima et al., 2021)。
- この領域の病変は、様々な神経学的症状(眼球運動障害、顔面神経麻痺、嚥下障害など)を引き起こす可能性がある。
- 脳幹部グリオーマなどの腫瘍性病変の診断・評価において重要な指標となる。
発生学的特徴
- 菱形窩は発生学的に後脳(菱脳)の背側部から形成される (Sadler, 2024)。
- 発生過程で脳室系の一部として第四脳室を形成し、その底面となる。
組織学的特徴
- 菱形窩の上衣細胞層は、一層の円柱上皮細胞で構成されている (Ross and Pawlina, 2023)。