孤束核 Nuclei tractus solitarii
構造と位置
- 延髄背側部に位置する細長い細胞柱である (Paxinos and Huang, 1995)。
- 延髄背側を矢状方向に走り、菱形窩底の下方、境界溝の外側に存在する (Mai et al., 2015)。
- 内側部、背側運動核の背外側、背内側、背外側、腹外側亜核、小細胞性亜核などの亜核群から構成される (Blessing, 1997)。
機能と連絡
- 脳幹の内臓求心性核として、迷走神経、舌咽神経、顔面神経からの入力を受ける (Loewy and Spyer, 1990)。
- 同側の疑核、橋上部の傍腕核、視床の味覚関連核へ投射する (Saper, 2002)。
- 呼吸、咳嗽、嘔吐、血圧調節などの反射機能を制御する (Travagli et al., 2006)。
- 内臓感覚情報の処理と自律神経系の調節で中心的な役割を果たす (Guyenet, 2006)。
関連する病態
- 孤束核の障害は、嚥下障害、咳嗽反射の低下、血圧調節異常などを引き起こす可能性がある (Jean, 2001)。
- 脳幹梗塞や脳幹出血により、孤束核が障害されることがある (Kim and Lee, 2013)。
- 延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)では、孤束核の障害により味覚障害が生じることがある (Brazis et al., 2016)。
臨床的意義
- 嚥下機能評価や自律神経系の評価において重要な解剖学的指標となる (Miller, 2008)。
- 脳幹部の病変診断において、孤束核の機能評価が重要な手がかりとなる (Crossman and Neary, 2014)。
命名の由来と歴史
- 「孤束核」という名称は、この核が孤束(tractus solitarius)に沿って位置することに由来する (Standring, 2015)。
- 19世紀後半に内臓感覚の中継核として同定され、その後の研究で自律神経系の重要な制御中枢であることが明らかになった (Blessing, 1997)。