錐体路 Tractus pyramidalis
基本概要
- 錐体路は身体の随意運動を制御する主要な神経経路であり、哺乳類において高度に発達している (Lemon, 2008)。
- 延髄の錐体を通過する神経線維群の総称であり、皮質脊髄路としても知られる (Porter and Lemon, 1993)。
解剖学的特徴
- 大脳皮質から脊髄に至る皮質脊髄線維が主要構成要素である (Nudo and Frost, 2009)。
- 一部の線維は脳幹の運動性脳神経核に終止する。
- 延髄下端で91~97%の線維が交差し、錐体交叉を形成する (Carpenter, 1991)。
機能的特徴
- 脊髄前角の運動ニューロンに接続し、骨格筋の随意運動を制御する (Rothwell, 1994)。
- 大脳からの運動指令を脊髄へと伝達する重要な経路である。
起始と終止
- 起始:主に大脳皮質の運動野(一次運動野、運動前野、補足運動野)から起こる (Dum and Strick, 2002)。
- 終止:脊髄の前角細胞および脳幹の運動性脳神経核に終わる。
臨床的意義
- 錐体路の損傷は、対側の随意運動障害(片麻痺)を引き起こす (Ward, 2012)。
- 脳卒中や外傷性脳損傷などによる錐体路障害は、重要な神経学的症候を示す。
- 筋力低下、痙性麻痺、腱反射亢進などの症状が特徴的である。
解剖学的経路
- 大脳皮質から内包を通過し、中脳、橋、延髄を下行する (Nieuwenhuys et al., 2008)。