終脳

「終脳」は、「末端」を意味するギリシャ語の「telos」と、「脳」を意味する「encephalon」から来ています。この言葉は脳の末端部を指し、人間の脳では最高次機能の中枢として発達しています。終脳は大脳半球と基底核の組み合わせで、後者は大脳皮質に覆われた粗大運動性の領域を占めます。

左右の大脳半球は非常に大きな構造で、大脳縦裂を境界とし、脳の外観の大部分を占めています。大脳半球の外表面には、大脳回と呼ばれる曲がりくねった高まりと、大脳溝と呼ばれる浅い溝があります。これらの大脳回・溝の配列パターンは個体や左右の大脳半球でも、また他人同士の脳を比較した場合でも、全く同じではありません。

大脳半球は中心溝と大脳外側溝を使って4つの領域に分けることができます。それぞれの領域には特殊な中枢があります。例えば、前頭葉の中心前回は随意運動司令センターで、前頭葉の前端部、つまり前頭極は人格の座とされています。

脳の下面でも終脳の広がりが見られます。複数の眼窩回や嗅神経などが存在します。視神経は互いに近づき交叉した後、左右の視索に分かれて後方へ向かいます。側頭葉の一部である海馬傍回と、その突出部分をなす鈎も脳の基底面で見ることができます。

脳の水平断面では、左右の大脳半球が表層の灰白質、つまり皮質と深層の白質からなることがわかります。皮質とそれが引き起こす中枢神経部分をつなぐ神経線維が投射線維であり、これらの集合体を内包と呼びます。内包は前脚、膝、後脚に分けられ、膝のすぐ外側には基底核の一部が位置しています。

大脳半球表面には前述の4区画以外にも、さらに1~2の区画が設けられることがあります。大脳外側溝を押し広げると、その奥に島と呼ばれる高まりが現れます。この島は第5番目の葉として扱われますが、その機能についてはまだよくわかっていません。島を覆う前頭・頭頂・側頭の各葉の大部分は弁蓋と呼ばれます。第6番目の葉は辺縁系に属し、帯状回、海馬傍回、歯状回を含みます。

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J0829 (10.4mm頂殿長の人間の胎児の脳、右半分:左方からの図)

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J0830 (13.8mm頂殿長の人間の胎児の脳、右半分:左方からの図)

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J0831 (46.5mm頂殿長の人間の胎児の脳、右半分:左方からの図)

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J0832 (右脳:成人脳の正中断面を左側からの模式図)

日本人のからだ(後藤 昇・国府田 稔 2000)によると

(1)終脳の概略

終脳は、脳の区分の中で大部分を占めており、ヒトの系統発生学的または個体発生学的な進化において急速に発展しています。終脳は、外套とその深部の大脳核に分けられます。外套は、表層の灰白質である大脳皮質と、その下層の白質である大脳髄質から成り立っています。

終脳の表面形態についての現代的な研究では、17世紀のSylviusによる外側溝の研究や19世紀初頭のRolandoによる中心溝の研究が有名で、これらの研究が後続の研究の先駆けとなりました。19世紀の終わりに出版されたRetziusの著書では、大脳溝と大脳回全体の記述が完成されています。しかし、日本の研究は20世紀に入ってからで、原(1913)による日本人の100の大脳半球についての観察、また後頭葉については林・中村(1913)による日本人100例についての観察があります。この間の研究状況については、小川・細川(1953)の著書に詳しい記述があります。