後脳 Metencephalon
定義と構造
- 後脳(Metencephalon)は、小脳と橋を含む脳の領域である。この用語は、"meta"(後ろ)と"encephalon"(脳)という語から構成される (Standring, 2021)。
主要構成要素
- 小脳:後頭葉の下方に位置し、表面には特徴的な多数のヒダを有する。平衡感覚の維持、筋緊張の調節、そして筋活動の協調を担っている (Kandel et al., 2023)。
- 橋:中脳と延髄の間に位置し、第四脳室の反対側には小脳が存在する。多数の伝導路および第5~7脳神経核を含んでいる (Crossman and Neary, 2020)。
発生と進化
- 後脳は、発生学的には菱脳胞から発生し、胎生期における神経管の分化過程で形成される (Sadler, 2022)。
- 系統発生学的には、脊椎動物の進化の過程において、運動制御と平衡感覚の向上に伴って発達してきた (Butler and Hodos, 2022)。
臨床的意義
- 小脳性運動失調:小脳の障害により、運動の協調性が失われ、歩行障害や言語障害が生じる (Ropper et al., 2019)。
- 橋病変:橋の障害により、顔面神経麻痺、感覚障害、眼球運動障害などが生じうる (Allan and Martin, 2021)。
重要な機能
- 運動制御:小脳を通じて、随意運動の調整と精密な運動の制御を行う (Purves et al., 2022)。
- 姿勢維持:平衡感覚の制御と姿勢の維持に重要な役割を果たす。
- 情報伝達:橋は、大脳と小脳、および脊髄との間の重要な神経伝導路として機能する。
解剖学的特徴
- 小脳は3つの部分(虫部、小脳半球、片葉小節葉)から構成される (Mai and Paxinos, 2023)。
- 橋は腹側部と背側部に分かれ、多数の神経核と神経線維を含む。
- 第四脳室の一部を形成し、脳脊髄液の循環に関与する。