脳 Encephalon
1. 基本構造と区分
- 脳は3つの主要部分から構成される (Kandel et al., 2021):
- 菱脳(髄脳および後脳を含む)
- 中脳
- 前脳(間脳および終脳を含む)
- 脳幹は、髄脳、橋、中脳から構成され、脊髄の上方に位置する。橋の背側には小脳が存在し、その上部は菱脳峡として狭小化する (Bear et al., 2020)。
2. 発生学的構造と発達
- 大脳半球は、脳胞の最前端部である終脳から発生し、成熟後は左右の大脳半球として脳の最前端部を形成する (Purves et al., 2019)。
- 脳幹は以下の4つの主要部分で構成される:
- 間脳:前脳(終脳)と密接な関係を持つ前部構造
- 中脳:脳幹の中央部を形成
- 後脳:橋と小脳を含む
- 髄脳:延髄として発達
- 小脳は、後脳の菱脳唇(第四脳室の前縁部における外胚葉性肥厚部)から発達する (Sanes et al., 2019)。
3. 機能的分類と役割
- 大脳半球:思考、記憶、学習などの高次脳機能を統合的に制御する (Squire et al., 2022)。
- 脳幹:呼吸、心拍、血圧調節などの生命維持に不可欠な基本的機能を自律的に制御する。
- 小脳:運動の協調性、平衡感覚の維持、姿勢制御において中心的な役割を果たす。
- 間脳:自律神経系の調節、内分泌系の制御、感覚情報の中継などの重要な機能を担う。
脳の構造は、発生学的な観点から見ると、前脳、中脳、菱脳の3つの基本的な脳胞から発達する (Standring, 2021)。これらの脳胞は成長とともに分化し、複雑な構造を形成する。前脳は間脳と終脳に分化し、終脳からは左右の大脳半球が発達する。一方、菱脳は後脳と髄脳に分化し、後脳からは橋と小脳が、髄脳からは延髄が形成される。
脳幹は、延髄、橋、中脳の3つの部分から構成され、これらは発生学的には異なる起源を持つ。特に、間脳は前脳(終脳)との密接な発生学的関係を保持しており、視床や視床下部などの重要な構造を形成する。後脳と髄脳は合わせて菱脳を構成し、小脳は後脳の特殊な領域である菱脳唇から発達する。この菱脳唇は、第四脳室の前縁部に位置する外胚葉性の肥厚部として特徴づけられる (FitzGerald et al., 2022)。
4. 神経解剖学的観点からの脳の構造
- 大脳皮質の層構造:大脳皮質は6層構造を持ち、各層は特定の神経細胞タイプと機能を持つ (Mountcastle, 1997)。
- 神経回路網:脳内の神経回路は複雑なネットワークを形成し、情報処理の基盤となる (Sporns, 2011)。
- 神経可塑性:脳は経験に応じて構造と機能を変化させる能力を持つ (Doidge, 2007)。
5. 脳の血管支配