束間束 Fasciculus interfascicularis
解剖学的特徴と命名
- 束間束は、脊髄後索の薄束と楔状束の間に位置し、コンマ形の領域(コンマ野)を形成する神経線維束である。
- その特異な形状から、半月束(Fasciculus semilunaris)やコンマ束(Schultze's comma tract)とも呼ばれ、解剖学的な位置関係から束間束(Fasciculus interfascicularis)という名称が一般的に用いられている。
- Philippe-Gombaultの三角として知られる領域の一部を形成し、後索の下行部(Pars descendens funiculus posterior)の重要な構成要素である。
- Westphal(1880)が最初に記載し、Schultze(1883)により「Schultzesches Komma」として広く知られるようになった。
構造と分布
- 頚髄および胸髄上部の後根由来の下行枝で構成され、胸髄中央部以下の後根線維は分散して下行する。
- コンマ束の形状は、尾方に向かって変化し、頭部のみが残って尾部が消失する。
- 束間束は、後根線維の下行性分枝として、脊髄の固有脊髄路の一部を形成する。
- 後根神経節細胞の軸索が分岐し、上行枝と下行枝を出すが、束間束はその下行枝の集合である。
- 後索内を下行する線維は、3-4髄節程度下降した後、後角に入り、脊髄固有ニューロンとシナプスを形成する。
機能的特徴
- T7以下の後根切断では、コンマ束の変性は生じない。
- C5-C6の後根線維はT12まで、T4切断では仙髄まで追跡可能であり、後柱および後交連領域で終末する。
- 感覚情報の統合において、上行性および下行性の神経回路網の一部として機能し、隣接する髄節間の協調を支援する。
- 体性感覚情報の局所的な処理と、脊髄反射回路の調節に関与している。
- 後根神経節からの求心性入力の空間的・時間的統合に寄与し、運動制御の精密化に貢献する。
臨床的意義
- 頚髄および胸髄上部の固有受容性感覚の伝達に関与し、姿勢制御や運動調節に重要な役割を果たす。