後脊髄小脳路 Tractus spinocerebellaris posterior
解剖学的特徴
- 胸髄核の大細胞から起始し、非交差性に側索周辺部背側を上行して、下小脳脚を通り、同側の小脳前葉に終止する (Brodal and Walberg, 1982)。
- 筋紡錘やゴルジ腱器官からの伸展受容と触圧覚の情報を伝達する (Oscarsson, 1965)。
- 体部位局在性を保持しており、伝達されるインパルスは意識に上らない (Grant, 2004)。
- 伝導路は主に第二次ニューロンで構成され、脊髄後角のクラーク核(胸髄核)に細胞体がある (Matsushita and Hosoya, 1979)。
- 頸髄および腰仙髄レベルでは、後索核を介して伝達される。
- 伝導速度が速く、即時的な姿勢調整に関与する (Burke et al., 1971)。
機能と意義
- 姿勢と四肢筋の運動の精密な協調に重要な役割を果たしている (Lundberg, 1971)。
- 無意識的な運動制御と姿勢維持に関与している。
- 求心性の伝導路であり、主に固有受容感覚情報を小脳に伝達する (Bosco and Poppele, 2001)。
- 体性感覚情報を小脳に伝達することで、運動の計画と実行の調整に寄与する。
- 下肢からの情報が優位に伝達され、歩行や姿勢制御に特に重要である (Jankowska, 2017)。
臨床的意義
- 障害により、同側の四肢の協調運動障害が生じる (Thach and Bastian, 2004)。
- 立位・歩行時のバランス維持が困難となり、筋緊張異常を引き起こす。
- 脊髄小脳路障害の診断には、運動協調性テストや歩行分析が重要である。
- 臨床症状は通常、同側性に現れ、運動失調や姿勢維持障害が特徴的である (Morton and Bastian, 2007)。
- 他の小脳性症状(測定異常、反復拮抗運動障害など)を伴うことがある。