前皮質脊髄路 Tractus corticospinalis anterior
概要
前皮質脊髄路は、運動制御を担う主要な下行性経路の一つであり、体幹筋および近位四肢の制御に特化している(Davidoff, 1990; Rothwell, 1994)。
解剖学的構造
- 脳の運動野から始まり、内包後脚を通過し、大脳脚の中央2/3を占める神経線維束 (Kuypers and Brinkman, 1970)。
- 延髄と脊髄の移行部で約80%が交叉し、残り20%が非交叉性の前皮質脊髄路として前索を下行する (Nathan and Smith, 1955)。
- 錐体交叉から脊髄に至るまでの経路では、前正中裂の近傍を下行する。
- 各髄節レベルで、前索から前角に向かって終末枝を出す (Armand et al., 1994)。
経路と終止
- 主に同側の脊髄前角に終わり、一部は前交連を介して反対側の前角にも到達する (Lawrence and Kuypers, 1968)。
伝導経路
- 大脳皮質運動野 → 内包後脚 → 大脳脚 → 延髄錐体 → 錐体交叉(約80%が交叉)→ 脊髄前索(非交叉性の20%)
- 脊髄前角の運動ニューロンにシナプス結合し、最終的に標的筋に到達する (Porter and Lemon, 1993)。
機能
- 体幹筋の運動制御を担当する (Davidoff, 1990)。
- 近位四肢(肩や腰)の粗大運動の調節を行う。
- 姿勢制御と歩行の調整に関与する (Rothwell, 1994)。
発生学的特徴
- 発生過程で、錐体路系の一部として大脳皮質から発達する (Martin, 2005)。
- 生後の髄鞘化により、運動機能の成熟に重要な役割を果たす。