内部の特徴(脊髄の)Morphologia interna (Medullae spinalis)
1. 基本的な内部構造
灰白質と白質の構成は、脊髄の基本的な解剖学的特徴を形成します (Patestas and Gartner, 2016)。
- 中心部にはH字形の灰白質があり、その周囲を白質が取り囲んでいます。これらは、それぞれ特異的な機能を担っています。
- 灰白質は、神経細胞体が集まり、シナプスを介した情報処理を行う中枢として機能します (Crossman and Neary, 2019)。
- 白質は、ミエリン鞘で覆われた軸索束が走行し、上行性・下行性の伝導路を形成しています。
2. 詳細な構造と主要な構成要素
- 灰白質には、ニューロン(神経細胞体)、グリア細胞が存在し、豊富な毛細血管網により栄養供給を受けています (Watson et al., 2012)。
- 白質の神経軸索束は、特定の走行パターンを示し、体性感覚や運動制御などの情報伝達を担っています。
- 中心管は、脊髄中心を縦走する細い管腔で、脳脊髄液により満たされています。
3. 解剖学的区分と機能的特性
- 灰白質は、前柱(運動性)、後柱(感覚性)、中間質に区分され、胸髄では特徴的な側柱(自律神経性)が認められます (Standring, 2021)。
- 白質は、前索、側索、後索に区分され、それぞれが特異的な伝導路系を形成しています。前索は主に運動性、後索は感覚性の伝導を担っています。
4. 髄節レベルによる形態学的特徴
各髄節レベルでは、以下のような特徴的な構造が認められます (Marieb and Hoehn, 2018):
- 灰白質の占める割合は、頚髄で18.0%、胸髄で13.2%、腰髄で36.3%、仙髄で47.8%、尾髄で57.7%と、下方に行くほど増加します。
- 断面形状は、頚髄では卵円形を呈し、胸髄では円形となり、腰仙髄では徐々に縮小していきます。
5. 機能的分節と特殊性
- 頚膨大(C5-T1)では、上肢の運動・感覚制御に関与し、特に前角が顕著に発達しています (FitzGerald et al., 2016)。
- 胸髄(T1-T12)は、自律神経系の制御に重要な役割を果たし、特徴的な側柱構造を有しています。