腰髄[第1-第5腰髄節](脊髄の)Pars lumbaris medullae spinalis [1-5]
解剖学的特徴
- 腰髄の横断面は円形で、太い前角と後角を持ち、白質は頚髄節と比べて少ない。
- 第1・第2腰髄節は胸髄節に類似し、胸髄核と中間質外側部の細胞群が発達している。
- 成人の腰髄は、第1腰椎から第2腰椎の高さに位置する。
- 腰髄腹側の前正中裂と背側の後正中溝が明瞭で、その間に前側索と後索が位置する。
- 灰白質内には前角、側角、後角があり、特に前角には下肢筋を支配する大型の運動ニューロンが存在する。
- 脊髄円錐に続く第4・第5腰髄節では、前角と後角が著しく発達している。
機能と臨床的意義
- 第3~第5腰髄の前角の運動性細胞は、下肢の大きな筋群を支配する。
- 下肢の運動・感覚制御、および膀胱・腸機能の制御に重要な役割を果たす。
- 腰髄損傷は、下肢の麻痺、感覚障害、および自律神経機能障害を引き起こす可能性がある。
代表的な病態と関連症状
- 腰髄円錐症候群:排尿障害、性機能障害、会陰部の感覚障害などが特徴的である。
- 馬尾症候群:両側性の下肢痛、膀胱直腸障害、鞍状部感覚障害を引き起こす。
- 脊髄空洞症:腰髄部に空洞が形成され、進行性の運動感覚障害を引き起こすことがある。
診断・治療における重要性
- MRIやCTなどの画像診断により、腰髄の構造異常や損傷を評価する。
- 神経学的検査により、腰髄節レベルの機能を評価し、適切な治療方針を決定する。
- 早期診断・治療が予後改善に重要であり、多職種による包括的なアプローチが必要とされる。