大脳鎌 Falx cerebri
構造と位置
- 大脳縦裂内に位置し、鎌状の形状で、その刃が下方を向いている (Gray and Lewis, 2018)。
- 前方は鶏冠から始まり、上縁は前頭稜と上矢状洞溝に沿って、内側後頭隆起まで伸びる。
- 後方は、後頭葉鎌となって深部へと伸びる。
- 前後方向に大きく広がる三日月形の硬膜の折り返し構造である。
- 左右の大脳半球間に深く入り込み、両半球を分離している。
血管系との関係
- 上縁には、上矢状静脈洞を含む (Standring, 2021)。
- 下縁は、脳梁上方を走り、下矢状静脈洞を含む。
- 後下縁は、小脳テントと癒着し、直静脈洞を含む。
- 静脈洞の合流部は、特に手術時に注意が必要な部位となる (Yasargil, 2019)。
- これらの静脈洞は、脳の静脈還流において重要な役割を果たしている。
- 静脈洞内の血流は、硬膜の二重構造により保護されている。
機能
- 大脳半球の左右分離と、脳の保護・支持を担う重要な構造である (Rhoton, 2020)。
- 脳の形状変化や動きに対して柔軟に対応し、力学的なストレスを緩和する。
- 頭部の外傷時には、衝撃を吸収・分散させる緩衝材としても機能する。
- 大脳半球間の物理的な境界として、一方の半球の病変が他方へ及ぶのを制限する。
臨床的意義