小伏在静脈

小伏在静脈は、足の静脈が集合して形成され、外果の後側から始まり、脛骨神経に平行して上行します。膝窩で脛骨神経の外側に従ってさらに上行し、最終的には膝窩静脈またはその周辺の静脈に繋がります。

日本人のからだ(大久保真人 2000)によると

小伏在静脈は、外果の後側で足の静脈が集まり、一本の幹になることで形成されます。ただし、主幹が二本で始まり、下腿中央付近で合流して一本となる例もあります。胎児では、三本または四本で始まる例が最も多く、静脈網の整理統合が未完成であることを示しています(表96)。また、胎児では内果前下端で発した静脈がその後方に出て、アキレス腱の内側を上行して小伏在静脈に流入する例が存在しました(133側中95側, 71.4%)。

小伏在静脈は、足の外側縁の静脈、特に足背静脈弓の外側部の延長で、外果の後を経て上行し、膝窩静脈に開口します。その途中で、一般に下腿下半分では内側脛骨皮神経の内側、上半分では外側に位置する傾向にあり、分岐と吻合により島または叢を形成することがあります。島の形成は成人では151側中22側(14.6%)であり、胎児では134側中70側(52.2%)で、特に9, 10ヵ月齢胎児および初生児では半数以上に認められました。その数は胎児70側で、1個(45側, 33.6%)、2個(16側, 11.9%)、3個(7側, 5.2%)、4個(2側, 1.5%)でした。また、静脈叢は下腿後側に形成され、成人では60側中1側(1.7%)にすぎないが、胎児では135側中18側(13.2%)で、初生児に最も多いとされています。

小伏在静脈は膝窩に向う途中で皮下から下腿筋膜下に入りますが、その位置は下腿の中位あるいはそのやや上方が大部分(59/60側, 98.3%)でした。ただし、常に下腿筋膜上を走行するものもありました(1/60側, 1.7%)。

小伏在静脈は膝窩静脈あるいはその周辺の静脈に開口する際に、脛骨神経と交差します。この際の神経との位置関係は、胎児121側では静脈が神経の内側を通るものが94側(77.7%)、外側を通るものが27側(22.3%)であり、成人44側ではそれぞれ32側(72.7%)、12側(27.3%)でした。また、大・小伏在静脈と皮神経との位置関係と頻度についての報告もあります(Murakami et al., 1994)。

小伏在静脈の開口部は膝窩静脈、大伏在静脈、大腿深部の静脈がありますが、以下のように単独で膝窩静脈に開口するものが多いです。

a.膝窩で膝窩静脈に終わるもの(93/151側, 61.6%)。

b.膝窩静脈および大腿深部の静脈に終わるもの(9/151側, 6.0%)。

c.大腿深部の静脈に終わるもの(18/151側, 11.9%)。

d.膝窩静脈、大腿深部の静脈および大伏在静脈に終わるもの(15/151側, 9.9%)。

e.大腿深部の静脈および大伏在静脈に終わるもの(4/151側, 2.6%)。

f.膝窩で深部に入らず、大腿に進んで大伏在静脈に終わるもの(8/151側, 5.3%)。

g.上は膝窩静脈および大伏在静脈に入るとともに腓腹筋の両頭間で深部の静脈に入るもの(1/151側.170)。

h.膝窩に向かう正常な本幹は非常に細く、本来の支流が太くなって腓腹筋の内側頭を穿通し、脛骨静脈に入るもの(1/151側, 0.7%)。

i.膝窩静脈に入らないものの、終末不明のもの(1/151側, 0.7%)。

また、稀な変異例として、小伏在静脈が下腿の下端から下腿中央にかけて大きな8字型の島を形成した例があります。その際、内側腓腹皮神経は膝窩から島頂まで静脈の外側を下行し、島頂でその外側表面を超えて島間に出て島縁内側を下行していました(胎児1例, 高橋, 1939)。

表96 小伏在静脈の起始数(%)

表96 小伏在静脈の起始数(%)