下直腸静脈 Venae rectales inferiores

J0623 (男性骨盤の静脈、右半分、左方からの図)

J0624 (女性会陰の静脈)
解剖学的特徴
下直腸静脈(肛門静脈)は、肛門管の下部および肛門周囲の静脈叢から血液を集める静脈群です(Gray et al., 2020; Moore et al., 2018)。これらの静脈は肛門管の歯状線より下方の外痔静脈叢を形成し、肛門括約筋周囲の静脈網を構成します。
下直腸静脈は主に以下の経路をたどります:
- 肛門周囲および肛門管下部の静脈血を集める
- 坐骨直腸窩(坐骨腸骨窩)を通過する
- 内陰部静脈に合流する
- 最終的には内腸骨静脈を経て下大静脈系に注ぐ
下直腸静脈は中直腸静脈と吻合し、肛門管の静脈血のdrainageにおいて重要な役割を果たします(Standring, 2020)。特に歯状線より下方の肛門管からの静脈還流を担当します。
静脈叢の構造
肛門部の静脈系は以下の2つの主要な静脈叢から構成されます(Sinnatamby, 2011):
- 内痔静脈叢:歯状線より上方に位置し、粘膜下層に存在。上直腸静脈および中直腸静脈にdrainageされる(門脈系および体循環系)
- 外痔静脈叢:歯状線より下方に位置し、肛門縁の皮下に存在。下直腸静脈にdrainageされる(体循環系のみ)
これらの静脈叢は歯状線付近で吻合しており、門脈系と体循環系の重要な吻合部位(portocaval anastomosis)の一つを形成しています(Moore et al., 2018)。
臨床的意義
痔核(hemorrhoids)との関連:
- 外痔核:下直腸静脈の拡張や血栓形成により生じます(Lohsiriwat, 2012)。歯状線より下方に発生し、肛門周囲の皮下静脈叢の拡張として現れます。疼痛を伴うことが多く、特に血栓性外痔核では激しい痛みを訴えます
- 内痔核:主に上直腸静脈系の拡張によるものですが、進行例では下直腸静脈系も関与します(Sun and Migaly, 2016)
門脈圧亢進症との関連: