胸肩峰静脈 Vena thoracoacromialis
胸肩峰静脈は臨床的にも解剖学的にも重要な血管構造です。以下にその詳細を説明します(Gray and Lewis, 2020; Netter, 2019):
解剖学的特徴
- 位置:前胸壁の上部から肩峰領域にかけて分布しています(Standring, 2021)。
- 走行:対応する胸肩峰動脈に沿って走行し、主に4つの枝(鎖骨枝、肩峰枝、三角筋枝、胸枝)を持ちます(Moore et al., 2018)。
- 流入:最終的に腋窩静脈に合流しますが、一部の枝は橈側皮静脈に流入することもあります(Drake et al., 2020)。
- 構造:薄い静脈壁を持ち、弁構造を含みます。
機能的役割
- 胸部上部、三角筋、鎖骨下領域、および肩峰領域からの静脈血を集めます(Sinnatamby, 2022)。
- 上肢と胸部の静脈循環において側副路としての役割を果たします。
- 胸部と肩の筋肉から代謝産物を運搬し、静脈還流を促進します(Agur and Dalley, 2017)。
臨床的意義
- 外科手術:肩関節や胸部の手術時に損傷のリスクがあり、特に腋窩部アプローチでの注意が必要です(Tubbs et al., 2019)。
- カテーテル挿入:中心静脈カテーテル挿入時に解剖学的ランドマークとして利用されることがあります(Marhofer, 2018)。
- 静脈還流障害:上大静脈症候群などの状態では、この静脈が側副路として拡張することがあります(Loukas et al., 2021)。
- 画像診断:血管造影検査や超音波検査で確認できる重要な解剖学的指標です(Whitley et al., 2022)。
参考文献
- Agur, A.M.R. and Dalley, A.F. (2017) Grant's Atlas of Anatomy, 14th Edition. Wolters Kluwer, pp. 462-465. - 上肢の血管系の詳細な解剖学的記述と臨床的関連性を提供する解剖学アトラス
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2020) Gray's Anatomy for Students, 4th Edition. Elsevier, pp. 701-703. - 医学生向けに胸肩峰静脈の構造と周囲の解剖学的関係を簡潔に説明した教科書
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2020) Anatomy of the Human Body, 41st Edition. Lea & Febiger, pp. 673-675. - 胸肩峰静脈の古典的かつ詳細な解剖学的記述を含む標準的な解剖学書