後脊髄静脈;後外脊髄静脈 Venae spinales posteriores; Venae spinales exernae dorsales
後脊髄静脈は脊髄後面・後外側面からの静脈血を集め、表在静脈系の縦走路の一部として根静脈を経て硬膜外静脈叢へ流出する。解剖的には後外側溝付近を走行し、中心・周辺静脈系からの還流を受け、根静脈へと集まる。変異や個体差が大きく、静脈性うっ血や硬膜動静脈瘻(SDAVF)などの病態で重要であり、MRI の背側高信号や蛇行血管像、DSA での瘻孔確認が診断に不可欠。治療は不要な表在静脈損傷を避けつつ、病的血流路の遮断を行うことが求められる。
概要
- 後脊髄静脈(posterior spinal veins)は、脊髄の後面〜後外側面(主に後索・後角に対応する表層)からの静脈血を受け、**脊髄表在静脈系(extrinsic / pial venous system)**の縦走路の一部をなす(Standring, 2021)。
- 一般に、脊髄表面には縦走する静脈路として、前正中脊髄静脈(anterior median spinal vein)、後正中脊髄静脈(posterior median spinal vein)、そして左右の**後脊髄静脈(posterior spinal veins)が想定され、これらが多数の横走吻合(coronal / transverse anastomoses)**で連絡しながら、根静脈(radicular veins)を介して硬膜外の静脈叢へ流出する(Standring, 2021; Haines, 2018)。
解剖(Terminologia Anatomica 準拠の要点)
1) 位置・走行(表在静脈系)
- 後脊髄静脈は、脊髄後面の**後外側溝(posterolateral sulcus)**近傍を縦走し、節段ごとに合流・分岐を繰り返しながら連続する(Standring, 2021)。
- しばしば「後正中」よりも左右の後外側に強く発達する縦走路として観察され、後根入出部・後外側溝周辺の表在静脈網と連続する(Haines, 2018)。
2) 集流域(何を集めるか)
- 脊髄実質内静脈(intrinsic veins)(中心静脈系・周辺静脈系)は、脊髄表面に出たのち、表在静脈系へ注ぐ(Haines, 2018)。
- 中心静脈系:中心管周囲〜灰白質から白質へ向かう穿通静脈を介し、表面へ連絡する。
- 周辺静脈系:白質周辺(表層)から表在静脈網へ短距離で流入しやすい。
- 後脊髄静脈は、機能的には**脊髄後方要素(後索・後角・後根関連領域)**からの還流を多く受ける“受け皿”となりうる(Standring, 2021)。
3) 流出路(硬膜外へ)
- 表在静脈系からの血液は、節段性に根静脈(radicular veins)へ集まり、硬膜を貫いて内椎骨静脈叢(internal vertebral venous plexus)(硬膜外静脈叢)へ流出する(Standring, 2021)。
- 内椎骨静脈叢は弁が乏しい/ない静脈網として扱われ、胸腹圧変化や体位で流向が変わりうる点が、脊椎・骨盤内臓器からの転移や感染の広がりの説明に用いられる(Standring, 2021)。
変異・発達(臨床的に重要な“個体差”)
- 脊髄静脈は動脈ほど規則的ではなく、縦走路の連続性(どの程度一本の“幹”として追えるか)や、根静脈への流出レベルには変動が大きい(Haines, 2018)。
- 一部のレベルでは、流出が少数の太い根静脈に偏ることがあり、静脈うっ滞や静脈性髄症を理解する上で重要となる(Ropper & Samuels, 2019)。
臨床統合(診察 → 画像 → 介入)
1) 病態の整理:脊髄の“静脈性うっ血”という見方