後脊髄静脈は、脊髄の後部に位置する静脈です。それらは、脊髄および周囲の組織から血液を排出する役割を果たします。
日本人のからだ(後藤 昇・国府田 稔 2000)によると
前根静脈と後根静脈は、脊髄からの静脈血を集め、硬膜を貫いて硬膜外の内椎骨静脈叢(頭蓋腔の硬膜静脈洞と同義)や外椎骨静脈叢と連絡します。その後、各体節の脊髄静脈から椎骨静脈、最上肋間静脈、肋間静脈、肋下静脈、腰静脈、外側仙骨静脈へと進み、腕頭静脈、奇静脈、半奇静脈、副半奇静脈、上行腰静脈、内腸骨静脈などと連絡した後、上大静脈または下大静脈に集まります。
特に太い根静脈については、大前根静脈および大後根静脈と呼ばれ、多くはL1-2に存在します。しかし、その血管径などは議論されておらず、動脈よりも定義が曖昧です。
脊髄表面の静脈は、前正中裂、後正中溝、前外側溝、後外側溝に沿って最大で6ヵ所の縦吻合を形成します。これらは部分的に欠如することもあります。これらの静脈をそれぞれ前正中静脈、後正中静脈、前外側静脈、後外側静脈と呼びます。これらの縦走静脈を連絡する吻合を冠状静脈と呼びます。以上の静脈系は前根静脈および後根静脈に流入します。
脊髄内部の静脈系の分布も動脈系に近く、正中領域からの中心静脈、外側領域からの周辺静脈、背側領域からの細根が、それぞれ前正中静脈、冠状静脈、前外側静脈、後外側静脈、後正中静脈などに流れます。
図65 脊髄内部の静脈灌流(後藤, 1987)
AR: クモ膜、AS: 体節動脈、AV: 椎弓、CV: 椎体、DM: 硬膜、GS: 脊髄神経節、PM: 軟膜、PVVE: 外椎骨静脈叢、PVVI: 内椎骨静脈叢、VBV: 椎体静脈、VC: 中心静脈、vco: 冠状静脈、VLA: 前外側静脈、VLP: 後外側静脈、VMA: 前正中静脈、VMP: 後正中静脈、VP: 周辺静脈、VRA: 前根静脈、VRP: 後根静脈、VS: 体節静脈
図66 椎骨静脈叢(Spalteholz, 1922改変)
AV: 椎弓、CV: 椎体、DIV: 椎間円板、FV: 椎孔、FIV: 椎間孔、PAI: 下関節突起、PAS: 上関節突起、PS: 棘突起、PT: 横突起、PVVE: 外椎骨静脈叢、PVVI: 内椎骨静脈叢、VBV: 椎体静脈、VIV: 椎間静脈