前脊髄静脈;前外脊髄静脈 Venae spinales anterior; Venae spinales externae ventrales
前脊髄静脈は脊髄前面を縦走する主要な静脈で、根静脈を介して脊髄静脈叢・椎骨静脈叢へ血液を流す。位置は前正中裂に沿い、前外側脈も含む場合がある。解剖的変異や吻合の数・太さに個体差があり、血流は体位や腹圧の影響を受けやすい。臨床では静脈うっ血性脊髄症や硬膜動静脈瘻の診断・治療で重要で、MRIのflow voidや造影増強が特徴所見となる。
概要
- **前脊髄静脈(anterior spinal veins)**は、脊髄前面を縦走する脊髄静脈系の主幹の一つで、脊髄内・脊髄表面からの静脈血を集め、根静脈(radicular veins)→脊髄静脈叢→椎骨静脈叢へと連結する。(Standring, 2021)
- 記載によっては、前正中の主幹(= anterior median spinal vein)に加えて、前外側面を走る前外(前外側)脊髄静脈を含めて「前脊髄静脈群」として扱われる。(Standring, 2021)
解剖(位置・走行・層)
1) 位置関係(解剖学的肢位)
- 前脊髄静脈は、脊髄の**前正中裂(anterior median fissure)**に沿う前面(腹側面)に位置し、脊髄軟膜(pia mater)表面の静脈網と連続する。(Standring, 2021)
- 脊髄表面の静脈は、前面の静脈系(前正中〜前外側)と、後面の静脈系(後正中〜後外側)に大別され、相互に吻合する。(Standring, 2021)
2) 縦走路とセグメント性
- 脊髄静脈系は、動脈系(前脊髄動脈・後脊髄動脈)ほど単純な連続幹ではなく、複数の縦走静脈とそれらを結ぶ吻合枝として表現されることが多い。(Standring, 2021)
- 特に胸腰髄移行部では、太い根静脈が流入するレベルが限られ、縦走路の発達や左右差が生じうるため、画像・術野では「連続する一本の静脈」に見えないことがある。(Rengachary & Ellenbogen, 2005)
静脈還流の全体像(脊髄内→脊髄外→椎骨静脈叢)
1) 脊髄内静脈(intramedullary veins)
- 灰白質・白質の微小静脈は、中心管周囲からの**中心静脈(central veins)と、周辺白質からの周辺静脈(peripheral veins)**として集約され、脊髄表面の軟膜静脈へと流出する。(Standring, 2021)
2) 脊髄表面(pial venous plexus)
- 脊髄表面には軟膜静脈叢が形成され、前面では前脊髄静脈(±前外側静脈)に合流し、さらに根静脈を介して硬膜外系へ連絡する。(Standring, 2021)
3) 根静脈・椎骨静脈叢(radicular veins → vertebral venous plexus)
- 根静脈は神経根に伴走して硬膜を貫き、**内椎骨静脈叢(internal vertebral venous plexus)**へ流入する。(Standring, 2021)
- 椎骨静脈叢は弁が乏しく、胸腹圧変動により流向が変化しうるため、脊髄静脈系は体位・呼吸・腹圧の影響を受ける。(Batson, 1940)