後外椎骨静脈叢 Plexus venosus vertebralis externus posterior

解剖学的特徴: 後外椎骨静脈叢は、椎骨の背面に位置し、椎弓板(laminae vertebrae)の外側面に沿って走行する静脈網である (Groen et al., 2004)。各椎骨レベルで横方向の吻合を形成し、椎骨の両側で互いに交通している。特に、頚椎領域での発達が顕著である (Netter, 2019)。

血管構造と連絡: この静脈叢は、内椎骨静脈叢(plexus venosus vertebralis internus)と椎骨間静脈を介して連絡している (Standring, 2021)。また、深頚静脈(v. cervicalis profunda)、椎骨静脈(v. vertebralis)、後頭静脈(v. occipitalis)とも吻合しており、分節状に配置された椎骨周囲の静脈網の一部を形成している。

機能と臨床的意義: 主な機能は、脊柱管内部からの静脈血のドレナージである。Batsonの静脈叢の重要な構成要素として、弁を持たない静脈網を形成しており、胸腔内圧や腹圧の変化に応じて血流方向が変化する可能性がある (Batson, 1940)。この特徴により、骨盤や腹部の悪性腫瘍の脊椎転移経路となることがある (Stringer et al., 2012)。また、脊椎手術時の重要な出血源となるため、手術アプローチの計画時に十分な考慮が必要である (Galgano et al., 2017)。

参考文献:

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J0609 (頚部の深部静脈:右側からの図)

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J0611 (顔の深部静脈:右側からの図)

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J0616 (腰椎の静脈の正中断面:左側からの図)

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J0617 (腰椎の静脈:上方からの水平断面図)