下眼静脈 Vena ophthalmica inferior
解剖学的特徴
- 眼窩底付近の細い静脈が集まって形成される静脈系であり、複数の細静脈が合流して主幹を形成する (Gray and Lewis, 2018)。
- 眼窩底を下直筋の上面に沿って後方に走行し、眼窩内容の下部を灌流する (Standring, 2020)。
- 走行中に、眼窩内の筋肉や脂肪組織からの細静脈枝を受け取る。
- 最終的に、上眼静脈と合流して共通幹を形成する (Moore et al., 2022)。
血管連絡と側副路
- 前方では、顔面静脈系と豊富な吻合を形成する (Netter, 2019)。
- 下方では、下眼窩裂を介して翼突筋静脈叢と交通し、重要な側副路となる。
- 後方で上眼静脈と合流後、多くの例で海綿静脈洞へと流入する (Sinnatamby, 2021)。
- これらの血管連絡は、頭蓋内外の静脈還流において重要な側副路を形成する。
臨床的意義
- 血管径が細く蛇行が強いため、血管造影での描出が技術的に困難である (Osborn, 2017)。
- 眼窩内圧上昇時には、重要な静脈還流路としての役割を果たす。
- 眼窩内の炎症性疾患や腫瘍性病変の進展経路となることがある (Dutton, 2021)。
- 海綿静脈洞血栓症の波及経路として、臨床的に重要な意義を持つ。
参考文献
- Dutton, J.J., 2021. Atlas of Clinical and Surgical Orbital Anatomy, 3rd ed. Elsevier.
- Gray, H. and Lewis, W.H., 2018. Gray's Anatomy, 41st ed. Elsevier.
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R., 2022. Clinically Oriented Anatomy, 9th ed. Wolters Kluwer.