網膜中心静脈 Vena centralis retinae
網膜中心静脈は、眼球の視覚機能を支える重要な血管構造です。解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです(Hayreh, 2011):
解剖学的特徴
- 網膜全域からの血液を集める終末静脈で、網膜内層の細静脈が合流して形成されます(McAllister, 2012)
- 視神経乳頭の中央部で視神経に入り、視神経軸索と膠質繊維に囲まれながら後方に走行します
- 視神経内では網膜中心動脈と併走し、通常は動脈の側方あるいは下方に位置します(Kang et al., 2015)
- 眼球から8-10mm後方で視神経を離れ、上眼静脈(約40%)または直接海綿静脈洞(約60%)に開口します(Hayreh, 2011)
- 直径は眼底部で約0.1-0.2mm、同じ位置の動脈より約25-30%太く、暗赤色を呈します
- 網膜内では、4本の主要分枝(上耳側・上鼻側・下耳側・下鼻側)に分かれて血液を集めます(Jonas et al., 2010)
臨床的意義
- 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)は、高血圧・糖尿病・高脂血症などを背景に発症する重要な眼疾患です(Rogers et al., 2013)
- CRVOでは、眼底に広範な網膜出血・軟性白斑・静脈拡張・乳頭浮腫が生じ、急激な視力低下を引き起こします
- 静脈の走行異常(特に動脈との交差部での圧迫)は、静脈閉塞の危険因子となります(Klein et al., 2008)
- 視神経内の限られた空間で動脈硬化性の動脈変化により静脈が圧迫されることが閉塞の一因となります(Green et al., 2014)
- 頭蓋内圧亢進では、中心静脈の拡張と乳頭浮腫が観察されることがあります(Wall and George, 2011)
網膜中心静脈システムは、網膜からの静脈還流を一手に担う重要な血管系であり、その異常は重篤な視機能障害を引き起こします。眼科診療において、この静脈系の詳細な評価は眼底検査の重要な要素となっています(Kang et al., 2015)。
最新の研究動向
- 網膜中心静脈閉塞症の早期診断における光干渉断層撮影血管造影(OCTA)の有用性が近年注目されています(Kashani et al., 2017)
- 抗VEGF療法は網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の治療として確立されつつあります(Campochiaro et al., 2020)
- 網膜中心静脈閉塞症患者における脳血管疾患リスクの上昇が報告されており、全身的管理の重要性が強調されています(Rim et al., 2016)