後頭導出静脈 Vena emissaria occipitalis

後頭導出静脈は、頭蓋内外の静脈系を連絡する導出静脈(emissary vein)の一つであり、頭蓋内圧調節と静脈還流において重要な役割を果たします(Gray et al., 2020)。

後頭部の静脈

J0608 (板間静脈：右側からの図)

解剖学的特徴

位置と走行経路

• 後頭導出静脈は、後頭骨の外後頭隆起(external occipital protuberance)付近に存在する導出静脈孔(emissary foramen)を通過します(Standring, 2021)。
• 頭蓋内では静脈洞交会(confluens sinuum)、特に横静脈洞(transverse sinus)や後頭静脈洞(occipital sinus)と連絡します(Drake et al., 2019)。
• 頭蓋外では後頭静脈(occipital vein)や後頭部の皮下静脈網と接続し、最終的には外頸静脈系(external jugular venous system)へ流入します(Moore et al., 2022)。
• 導出静脈孔の大きさと位置には個体差があり、時に複数存在することもあります(Netter, 2021)。

組織学的・構造的特徴

• 後頭導出静脈は静脈弁を持たない特殊な構造を有しており、これにより双方向性の血流が可能となります(Drake et al., 2019; San Millán Ruíz et al., 2002)。
• 骨組織に囲まれた導出静脈孔内を走行するため、静脈壁は薄く、周囲の骨膜と密接に関連しています(Standring, 2021)。
• この静脈は海綿状の骨内静脈構造を持ち、骨組織との間に豊富な吻合を形成します(Gray et al., 2020)。
• 静脈弁の欠如により、頭蓋内外の圧力勾配に応じて血流方向が変化する特性を持ちます(Tubbs et al., 2007)。

発生学的背景

• 胎生期における頭蓋骨の発生過程で、原始的な静脈叢から形成されます(Moore et al., 2022)。
• 出生後も成長に伴い導出静脈孔の大きさや静脈の発達度が変化します(Boyd et al., 2015)。

機能と生理学的意義

頭蓋内圧調節機能

• 頭蓋内外の圧力差に応じて血流方向が変化し、頭蓋内圧(intracranial pressure, ICP)の調整において重要な役割を果たします(Netter, 2021; Mortazavi et al., 2012)。