前頭板間静脈 Vena diploica frontalis

J0608 (板間静脈:右側からの図)
解剖学的特徴
構造と位置
- 前頭板間静脈は、頭蓋骨の板間層(diploë)内を走行する静脈である。板間層とは、頭蓋骨の外板(outer table)と内板(inner table)の間に存在する海綿質骨組織を指す (Standring, 2021)。
- 前頭骨の板間層内において、主に正中線付近を矢状方向に走行し、前頭部における重要な静脈還流路を形成している (Moore et al., 2022)。
- 静脈壁は薄く、弁を欠くという特徴を持ち、血流の方向が変化しやすい構造となっている (Standring, 2021)。
静脈系の連絡
- 他の板間静脈(頭頂板間静脈、側頭板間静脈、後頭板間静脈)と広範な吻合を形成し、頭蓋骨内の静脈ネットワークを構成している (Drake et al., 2019)。
- 板間静脈系は、頭蓋骨の外側と内側の両方向に交通を持つことで、頭部の静脈還流において重要な役割を果たしている (Drake et al., 2019)。
経路と接続
頭蓋外への交通
- 前頭板間静脈は、眼窩上孔(supraorbital foramen)または眼窩上切痕(supraorbital notch)を通過して、眼窩上静脈(supraorbital vein)と交通している (Standring, 2021)。
- この交通により、顔面の静脈系と頭蓋内静脈系との間に連絡が形成される (Standring, 2021)。
- 前頭部の頭皮静脈や、前頭導出静脈(frontal emissary vein)を介して、頭皮の静脈叢とも広く交通がある (Moore et al., 2022)。
頭蓋内への開口
- 前頭板間静脈は、主に上矢状静脈洞(superior sagittal sinus)へと開口し、そこから静脈血を還流する (Standring, 2021)。
- 一部は前頭静脈洞(frontal sinus)周囲の静脈叢を介して、海綿静脈洞(cavernous sinus)方向への交通も有している (Drake et al., 2019)。
- 硬膜静脈(meningeal veins)との交通により、硬膜と頭蓋骨の静脈系が結ばれている (Drake et al., 2019)。